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2020年3月29日日曜日

ロックダウンも「要請」ベース。有効に機能させたいなら,政府・都道府県は経済的損失に補償する約束を

今後,政府が緊急事態宣言を出すことは大いにありうるが,その時,多くの人が「えっ!何でそうなるの!」と思うことになるだろう。その時のための思考整理メモ。抽象的過ぎるが、いまのうちにやっておかないと、次から次へと事件が起きて個別的にしか考えられなくなる恐れがある。シェア先は参考になる記事。。

 ロックダウン=都市を封鎖したり、強制的な外出禁止や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行ったりする措置について,日本では,例え緊急事態宣言が出されてもさほど強力に,強制力や罰則を伴って実行されるわけではなく、「要請」ベースになる。法律のつくりから、そうなる。

 緊急事態宣言のもとで都道府県知事が比較的強力にできることは,1)外出の自粛や施設の利用制限や停止を要請し,必要なら指示すること,2)緊急物資の配送を要請すること,3)食品・医薬品などについて売渡を要請したり収用したりすること,4)臨時の医療施設のために土地・建物を収容すること,5)感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、または汚染された疑いがある場所の交通を制限し、または遮断すること,6)物資の補完や収容のために立ち入り検査を行うことなどがある(正確には法律家の解説を読まれたい。1,2,3,4,6は新型インフルエンザ特措法による。5は感染症法に基づく措置なので,緊急事態宣言がなくてもできる)。

 ただ,従わない場合の罰則はあるものと,ないものがある。例えば,外出の自粛については罰則がない。

 例えば、外出の自粛について,いま東京都で行っていることと緊急事態宣言の下で行われるいわゆる「ロックダウン」の違いとは,何の法的根拠もない行政の長からの「お願い」レベルから法的根拠はあるが罰則のない「要請」に変わるだけである。これは、人をわけのわからないもやもやした気持ちにさせる。

 このいろいろなことが「要請」ベースで行われる方式がどのような事態を生み出しうるかについて、考えておくべきことがいくつかあるように思う。

1.「要請」だから効果がないかというと,やり方次第ではおそらくあるだろう。例えば,1)施設の利用制限に公共交通機関の駅やバスステーションを加えれば,交通各社はおそらく従うので,外出・移動は事実上大きく制限されるだろう。また、2)自粛を破ったものに対するごうごうたる非難がネットやマスメディアで沸き上がると予想される。それに,外出を控えさせる効果があるかと言えば、それなりにあるだろう。ただし,おそれく晒し,いじめ,濡れ衣,不公平を伴いながら。

2.「要請」に自主的に従ったという形であることにより,それ以上の国家的強権を発動させないという効果はある。警察・自衛隊の強制力をバックに行政が進められる事態が恒常化することまでは進まない可能性はある。

3.しかし、「要請」に従わない人々に対する非難が高まり、より強権的な措置を待望する世論が盛り上がることも予想される。そこで,何らかのアクシデントの際に超法規的措置が行政機関・警察・自衛隊によって取られる事件が起こったりすると、世論がこれを支持し、より強権的な立法が行われることもありうる。

4.「要請」に従ったために営業や雇用に深刻な損害が生まれるが,自主的に従ったのだからということで補償を求めることが権利として認められず,行政の恩恵的措置としての救済しか与えられないおそれがある。その経済的損害は深刻で、経済危機を悪化させる。

5.「要請」への協力による経済的損失には補償を求めにくいことからも、強制と補償のセットの方がより望ましいのではないかという議論が浮上する可能性もある。

 当面の話として、内容が妥当な「要請」を効果的に実現し、かつ法と民主主義を守るという見地で考えるならば、この記事が述べるように、「要請」に従った場合の経済的補償を政府・都道府県が明確にすることが効果的だろう。これによって住民の側には「要請」に応じる動機が生まれて感染拡大防止の効果が上がり、かつ生活・営業が守られる。

 長い目で見れば、「お願い」「要請」と称して責任ある決定を行わず、さりとて強権的に「決定」した場合にはその在り方が民主的に検証されないという、日本の政治・行政の在り方が試練にさらされているのだろう。

「東京「ロックダウン」も封鎖できません? 「要請」で乗り切るためにも「補償と現金」を」弁護士ドットコムニュース,2020年3月28日。
https://www.bengo4.com/c_18/n_10982/

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