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2023年1月15日日曜日

松本清張『日本の黒い霧(上)(下)』は歴史的な書物として読むべき

  NHKスペシャル未解決事件で帝銀事件が取り上げられたためか,松本清張『日本の黒い霧(上)(下)』の評判が上がっている。版元の文藝春秋社も文庫にNスペの帯を付けて売り出しているようだ。

 しかし,『日本の黒い霧』の中には,その後の研究・調査の積み重ねで覆されている箇所も少なくない。私は松本清張を好んで読みもするし(とはいえ30冊程度で初心者級だが),その近現代史研究の中でも『昭和史発掘』からは学ぶところも大きかったが,戦後史に関心を持つ研究者としては,むやみに『日本の黒い霧』を,いまでも真実であると持ち上げることには同意できない。

 私個人の関心から言うと,「帝銀事件の謎」,「推理・松川事件」,「追放とレッド・パージ」は今なお戦後の裏面史をえぐっているし,「下山国鉄総裁謀殺論」,「『もく星』号遭難事件」,「征服者とダイヤモンド」も,結論や松本氏のその後の論のふくらませ方(たとえば小説『一九五二年日航機「撃墜」事件』)には同意できないが,問題の所在を鋭く提起した歴史的価値があると思う。

 対して,「白鳥事件」「革命を売る男・伊藤律」は,今日ではまったく誤りであることが渡部富哉『白鳥事件 偽りの冤罪』『偽りの烙印』などによって証明されている。文春文庫版では,いまでは「作品について」(2013年)という文が掲載されて,伊藤律スパイ説は認めがたいと記されている。そして終章の「謀略朝鮮戦争」も,朝鮮戦争がアメリカによって一方的に計画され,日本国内の数々の謀略もその伏線であったとみなすものだ。北朝鮮が能動的に開戦を準備したことがわかっているいまでは,一面的に過ぎる主張と言わざるを得ない。

 『日本の黒い霧』は,今でもそれが真実だというものとしてでなく,当時,松本清張氏がこのように考えて書いたのだという,歴史的な書物として読むべきだろう。


文春文庫 松本清張『日本の黒い霧』上・下https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167106973
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167106980



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