フォロワー

ラベル 天皇制 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 天皇制 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年10月24日木曜日

考えようとした『河北新報』:「即位の礼」報道

 『河北新報』の2019年10月23日付朝刊トップは「『国民に寄り添う』 正殿の儀 天皇陛下即位を宣言 各国の元首ら2000人参列」の見出し。左側に小さく「雨続き二次災害警戒」の見出し。
 総合面2-3面は「皇位継承 議論後回し 女性容認の世論とずれ」「天皇陛下お言葉 憲法巡り『順守』→『のっとり』社会情勢への配慮か」「平成踏襲 批判は封印 儀式の骨格戦前が基」などの見出しの他,「厚生年金逃れも立ち入り 厚労省検討 法改正で権限拡大」などの記事が左右に。
 社会面22面は,「天皇陛下即位礼正殿の儀」「被災者に心寄せ」「宮内庁幹部『パレード延期安堵も』」「被災者思いさまざま 見ている暇ない/元気もらえた」などの見出し。
 社会面23面は即位礼の記事はなく,「災害ごみ手付かず」「被災3県 仮置き場増設でしのぐ」「郡山 処理施設浸水でストップ 生ごみ以外の排出控えて」「『面倒見良いリーダー』宮城・丸森小野さん 住民ら急死惜しむ」などの見出し。
 正殿の儀一辺倒ではなく台風被害も大事だという判断をし,儀式のあり方を論じるべきだと提起していることは,考えた上での紙面構成と見たい。
 ヨイショ記事ばかりでは新聞の役割放棄だが,『河北』はそうなるまいと努力した。




無惨な『日本経済新聞』:「即位の礼」報道

『日本経済新聞』2019年10月23日朝刊。1面の見出しは「天皇陛下即位の礼」「『象徴つとめ果たす』正殿の儀,2000人参列」「海外の賓客を歓待」「国民の幸せと世界平和願う 天皇陛下のお言葉」。左側に細長く「離脱関連法案審議入り」と別の記事。
 総合面の2-3面もほとんど即位の礼関係で,見出しは「『祝賀外交』活発 首相,連日の2国間会談」「饗宴華やか 舞楽や和食,おもてなし」「令和の天皇像にじむ」「国民とともに世界に目線」「平成の式典を踏襲 国民主権・政教分離に配慮」。わずかに「ソフトバンクGのウィーワーク支援」の記事。
 社会面の30-31面もほとんど即位の礼関係。見出しは「列島各地心から祝福」「『助け合う時代願う』」「即位の宣明高らかに」「古来からの儀式,厳粛に」「直前に雨やみ晴れ間」「『平和への思い新たに』」など。わずかに小さく「台風の被災地 複雑な思いも」。
 新聞の役割は,何事にも冷静に距離を取って報じ,論じるというものではないのか。そういう視点がほとんどない。もちろん,見出しだけでなく中身も確かめたが感想は同じ。政府から与えられたストーリーにしたがって天皇を賛美するだけの提灯持ちのヨイショ記事が多すぎ,新聞ではなく広報に近い。ある程度覚悟して読んだのだが,それでもげんなりした。


2019年5月1日水曜日

明仁氏と日本国憲法と私たち

 1989年1月9日。明仁氏は天皇として即位された際に,「皆さんとともに日本国憲法を守り,これに従って責務を果たすことを誓い,国運の一層の進展と世界の平和,人類福祉の増進を切に希望してやみません」と言われた。

 2019年4月30日。明仁氏は天皇の位から退位するにあたり,「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します」と言われた。

 ここからわかるのは,明仁氏が,自らの地位を日本国憲法にしたがって理解し,日本国憲法に定められた象徴としての任務を果たそうと考えてきたということだ。彼は,憲法以外の,たとえば「日本の伝統」のようなもののために自らが天皇なのではなく,日本国憲法があるから天皇なのだと考え,そのことを肯定して来た。

 もっとも,気をつけなければならないのは,彼が,憲法で定められた国事行為を拡大解釈し,憲法が命じたよりも広い範囲の行動をとったことだ。ただし,その行動において,憲法の理念に沿うような行動をとろうとしたこともまた認められる。明仁氏の歩みや,その後世への影響については様々な議論が可能であるし,議論しなければならない。

 そしてまた,日本国憲法が認めたからと言って,天皇制という制度が現代社会にふさわしいものであるかどうか,天皇という存在と国民主権は矛盾しないのかという,根本的な問いは残っている。

 しかし,もうひとつ考えねばならないのは,本来,日本国憲法の理念に沿うように行動しなければならないのは日本国政府であり,政府がそのように行動するよう不断の努力でもって促し,監視するのは日本国民の役割であり,憲法の理念を生活に生かすべきなのもまた日本国民だということだ。日本国憲法をどちらかと言えば肯定する人々にとっては,そういうことになる。

 とすれば,私を含むそうした人々は,「平成」として区切られたこの30年間に,結果として,多くのことを明仁氏に頼ってしまわなかったかと,自問してみるべきかもしれない。憲法の理念を能動的に実現することは国民の責務であって,天皇はそうした国民を象徴するものだ。象徴たる個人が国民に範を垂れるべきものではないのであって,そうなってはかえって憲法の理念を否定することになる。

 私たちは,この30年間,自分たち自身の力で日本国憲法を実現してきたのだろうか。明仁氏が退位される今日,このことを考えねばならないと思った。

(4月30日23時57分記す)

大藪龍介『検証 日本の社会主義思想・運動1』社会評論社,2024年を読んで

 大藪龍介『検証 日本の社会主義思想・運動1』社会評論社,2024年。構成は「Ⅰ 山川イズム 日本におけるマルクス主義創成の苦闘」「Ⅱ 向坂逸郎の理論と実践 その功罪」である。  本書は失礼ながら完成度が高い本とは言いにくい。出版社の校閲機能が弱いのであろうが,校正ミス,とくに脱...