自分の日常をそのまま本で読むというのは,めったにない体験である。書かれていることがほぼ100%理解できる。自分が書いたのだろうかと錯覚するほどである。だが,よく考えると違う。もし私が書けば,だらだらと5倍ほどの量で,およそひとさまの目に触れさせることができないような内容となってしまうことは確実であろう。私は,本書が真実の塊であることを知っているが,サブタイトルだけには多少の嘘があるのではないかと推定する。ホンネを書いたらこれではすまないと思うからである。怒りと嘆きを鎮め,筆致を抑制し,読者に伝えるべきことのみを伝えようとしてこれを果たした,木村教授の理性を心より称賛したい。
木村幹『国立大学教授のお仕事--とある部局長のホンネ』筑摩書房,2025年。
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