クリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベスCEOの発言が報じられている。
「中国は悪だ。中国は恐ろしい。しかし、日本はもっと悪い。日本は中国に対してダンピング(不当廉売)や過剰生産の方法を教えた」
「日本よ、気をつけろ。あなたたちは自分が何者か理解していない。1945年から何も学んでいない」
だそうだ。TBS NEWS DIGより。
私は事実にのみ忠実であるべき研究者なのでむやみに「日本が正しい」と言い張る気持ちはまったくない。しかし,逆に根拠なく「日本が悪い」と言うのもおかしいと思う。なので一応,コメントする。
ゴンカルベスCEOは会社のサイトによるとカリフォルニア・スチール・インダストリーズ(CSI)のCEOを5年間務めたそうだ。CSIは,旧カイザースチールの閉鎖された製鉄所を,旧川崎製鉄とブラジルのヴァーレが投資して再生させた会社である。「邪悪な日本」の投資によって設立された会社を自ら経営していたのだ。
また,クリーブランド・クリフス社がM&Aで得た資産の中には,インディアナハーバー製鉄所がある。旧新日鉄が旧インランドスチールに10%資本参加して技術協力した製鉄所である。旧I/N Tek, I/N Kote社だったニューカーライル冷延・亜鉛メッキ工場もある。旧インランドと合弁した旧新日鉄が,広畑製鉄所の当時最新だった技術を投入して建設した工場である。元アームコ,その後AKスチールと呼ばれた会社のミドルタウン製鉄所もある。旧川崎製鉄が50%資本参加することによって存続した製鉄所である。「邪悪な日本」の投資がなければ存在または存続しなかった製鉄所を,クリーブランド・クリフス社は,いままさに運営しているのである。
これが私だけの意見でない証拠に,もう一言,ミドルタウンに住んでいた著者による本から引用しておこう。「カワサキとの合併は、不都合な真実を象徴する出来事だった。『ポスト・グローバル化の世界では、アメリカの製造業は厳しい状況下にある』という真実だ。アームコのような企業が生き残ろうと思えば、再編が必要になる。カワサキはアームコに、そのチャンスを与えた。ミドルタウンを代表するこの企業は、おそらく合併がなければ生き残れなかっただろう」。J・D・ヴァンス著(関根光宏・山田文訳)『ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~』 (光文社未来ライブラリー) (p.82). 光文社. Kindle 版より。 副大統領閣下もご承知のことだ。
参考
「「1945年から何も学んでいない」 USスチール買収めぐり「クリーブランド・クリフス」CEOが日本を激しく批判」TBS NEWS DIG,2025/1/14。リンク
川端望「アメリカ鉄鋼業のリストラクチャリング:衰退と転換のプロセス」金田重喜編著『苦悩するアメリカの産業 -その栄光と没落・リストラの模索-』創風社,1993年。ダウンロード
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「バイデン米大統領による,日本製鉄のUSスチール買収計画中止命令に接して」Ka-Bataブログ,2025/1/5。リンク
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