ここ数日間の新型コロナウイルス感染の動きでは、明らかに外国から帰国した人々の感染が増えている。したがって、帰国者に各自十分な健康観察行動をとっていただくこと、その足取りを確認できるようにしておくことは非常に重要だ。
ところが政府は「水際対策の抜本的強化」をいいながら、帰国者の検疫はするものの、健康観察は本人任せであり、昨日まで何も支援して来なかった。とくに危険なのは、空港から自宅等への移動についてタクシーを含む公共交通機関の使用を禁止しておきながら、移動手段を見つけられずに困っている人を放置していたことだ。これでは、せっぱつまった人がこっそりタクシーや電車に乗るのは当たり前である。政府のいい加減な方針がそうした逸脱を促し、事実上は感染拡大を促進し、見えないクラスターを発生させる危険を高めている。帰宅手段確保を自己責任に任せ無支援でいることは、今この瞬間、最低最悪の政策である。
したがって、政府は緊急に資金、人員、車両を動員し、海外から日本に帰国した人々の自宅等への移動を支援し、1人1人の待機・健康観察場所を確認し、その実施状況をモニタリングすべきだ。それは、過保護でも何でもない。感染拡大を防止する最も有効な方策だ。
本日、ようやく動きがあり、河野防衛相は自衛隊に災害派遣命令を出し、待機施設への輸送業務や生活支援のため、成田空港に派遣したとのこと。都道府県知事の要請をまたない防衛相決定による派遣だそうだ。これは緊急措置としてはよい。しかし、政府として水際対策に組み込んだ帰国者支援の決定を行い、統一した指揮の下、持続的に行えるよう規模を拡大すべきだ。厚生労働省のQ&Aはまだ何も修正せず自力帰宅を促すだけのものだ。
また、このような移送業務に自衛隊を用いるのが有効かどうかも至急検証すべきだろう。物量や防護体制の問題で自衛隊にしかできないのであればそうすればよい。他の空港について都道府県知事から要請すればよいだろう。しかし、通常の行政組織と民間企業にむいた仕事であれば、自衛隊は検疫に集中してもらい、バス会社等への緊急発注を行い、運転と案内、モニタリングの人員を稼働させるべきだろう。とくにモニタリングは自衛隊に適した業務ではないことには注意が必要で、むしろ政府と自治体とが連携しなければならない。厚労省、自衛隊、自治体の連携が必要かもしれず、政府が統一した方針を出す必要がある。
これらのためにバス会社に緊急発注を行ったり、誘導やモニタリングのための人を追加雇用することは、それにかかわる人々に感染リスクを負っていただくという問題はありつつも、経済的には有効な景気対策ともなりうる。直ちに大盤振る舞いで予算をつけるべきだ。
「水際対策の抜本的強化に関するQ&A」2020年3月26日版。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html#Q4-1
Q:対象となった者は、空港等から待機場所の自宅(又は宿泊施設等)までどのように移動すればいいですか。
A:出国前に、家族や会社を通じて空港から自宅までの交通手段を御自身で確保していただくようお願いします。電車、バス、タクシー、航空機(国内線)などの公共交通機関を使用しないようお願いいたします。
Q:移動手段が自分で確保できない場合、どうすれば良いですか。
A:出国前に移動手段を確保していただきますようお願いします。(万が一用意できていない場合、用意できるまでご自身で空港周辺の宿泊施設等を確保していただきそこで待機いただくことになります。)
<参考>台湾も当初同じ問題を抱えていましたが,3月4日から「防疫タクシー」の制度が導入されています。 別のページによれば「防疫バス」もあるとこと。
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川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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