この措置の行く末について,押谷仁教授は非常に重要なことを言っている。
「危険な地域から人を受け入れないことは感染症対策としてはあり得る。ただ、危険な地域は東南アジアや米国などにも広がっており、全部やらなければならなくなる」(『東京新聞』2020年3月6日)。
そうなったらどうなるのか。
私が先日の専門家会議の会見を見て感銘を受けたのは,現在の感染症対策を「武漢というところは,社会機能を停止させることで感染の拡大の収束に向かおうとしたが,わが国の現時点では社会経済活動を可能な限り維持しつつ感染拡大抑制の対応策を取るという,そう言うバランスを持ってやることが求められている」と理解し,その線で進めようとしていることだ。的確なとらえ方だと思う。社会科学者がもっと早く言うべきだったと反省した。この方向性を守るべきだ。そうすることで,日本社会の強靭さを示すべきだ(買い占め騒動など,強靭でないところも確かにあるが)。
海外からの入国規制を,イタリア,フランス,イギリス,アメリカと広げていったらどうなるのか。確かに,感染者は互いに行き来しなくなる。それはいい。しかし,人と物と金と情報も行き来しにくくなる。無人運転とネットですべてが動くわけではないからだ。その影響は大きい。わが日本は自給自足しているわけではないからだ。
そうすれば,社会の機能を停止してウイルスを抑え込むというモードに移行する。感染症対策のモードだけでなく,社会のモードが移行する。
それは危険だ。感染症で死ぬ人が減ったとしても,物不足,コストプッシュインフレ,所得低下,失業により,健康状態が悪化し,死ぬ人が増える恐れが大きくなる。それでは本末転倒だ。
「社会経済の機能を可能な限り維持しながら感染拡大を抑制する」というモードを崩してはならないと,私は思う。
「<新型コロナ>中韓からの入国規制 首相表明 ビザも停止 指定場所で2週間待機へ」『東京新聞』2020年3月6日。
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