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2020年3月16日月曜日

「困っている人を助けたい」ならば、自民党内閣の大臣など辞められてはどうか:森まさこ法相の「検察官は逃げた」発言について

森まさこ法相は,「12歳のとき父が全財産を無くし弁護士に救われたのが」弁護士を目指したきっかけだという。「働きながらの進学。苦しかった」とも言われる(留学記)。消費者保護問題に関心があり,「困っている人を助けたい」という思いが自分を導いて来たとも言われる(公式サイト)。私は東北大学で森氏と別の学部で同学年であった。彼女は男子学生の間で有名人であったからその存在は知っていたが,学生行事の事務連絡でお話しした以外は接点はなかった。そんなことを考えていたのだなあと,しみじみ思う。

 今回の「東日本大震災の時、検察官は福島県いわき市から国民が、市民が避難していない中で最初に逃げたわけです。その時に身柄拘束をしている十数人の方も理由なく釈放して逃げたわけです。災害の時も大変な混乱が生じると思います」という発言は,震災後の検察への怒りが思い起こされてのことだろう。震災後に森氏は野党議員として(当時は民主党政権),2011年10月27日11月24日の参議院法務委員会で,福島地検が「震災直後に福島地検いわき支部が、いわき市は避難地域でもないのに市民を置き去りにして国家機関である検察庁が先に逃げて、その前提として被疑者を釈放した」(11月24日)としている。それが事実であるかは別として,被災地住民への思いから当時このように主張されたのだろう。私は,それは疑わない。

 だが,被災地住民への思いも,いま森氏が行っている,法解釈を強引に変えて東京高検検事長の定年を延長し,その流れで検察官の定年を延長しようという,そんな仕事の中で唐突に語るとおかしなことになる。冒頭の発言は,検察官の定年延長がどうして必要になったのかと問われての発言だ。検察官というのは定年延長しなければ災害時に職場を放棄して逃げるものなのか。また森法相は,災害時に職場を放棄して逃げるような検察官を管轄しており,そんな人たちの定年を延長しようというのか。そんな人たちも定年を延長すれば逃げないのか。
 まちがっているというより,全然関係ないことだろう。

 そう。検察官の定年延長は,森氏の被災地への思いと関係ないのだ。森氏が「困っている人を助けたい」というならば,それとは無縁の特定秘密保護法の推進や検事長の定年延長などに携わらねばならない,自民党内閣の大臣など辞めてはどうか。その方が,ご自身の原点に沿って働けるのではないのか。

ニューヨーク大学ロースクール(NYU)留学体験記。魚拓
http://web.archive.org/web/20130309105748/http://www.nichibenren.or.jp/activity/international/studyabroad/nyu.html

森まさこOfficial Website
https://morimasako.com/

第179回国会 参議院 法務委員会 第2号 平成23年10月27日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=117915206X00220111027&spkNum=131&current=4

第179回国会 参議院 法務委員会 第4号 平成23年11月24日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=117915206X00420111124&current=2

「森法相「国会審議に迷惑」と陳謝 検察逃亡で釈明、野党納得せず」時事ドットコムニュース,2020年3月13日。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020031300607&g=pol

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