PCR検査について、もっとやれという人は政府を非難し、重症者特定とクラスター追跡でよいという人はもっとやれと言う人を非難にする。政策を誤らせないために議論することは必要だが、検査の話だけに限って延々とやるのはのは適切でない。
見なければならないのは、感染したと特定されていないが、風邪・肺炎症状の人、自分や家族が感染したかもしれないと不安に思っている人がたくさんいるということだ。この人たちを支援するための議論をもっと増やすべきだ。
検査をもっとやって感染者を見つけろと言うならば、多くの人が軽症の感染者と認定されたときにどう治療するのかを、あわせて言うべきだ。病床が足りなくなるから、一般病院に広げねばならないし、入院の優先順位を決めねばならない。準備せずに行えば医療崩壊を起こす。それは防げても、多くの人を自宅療養とせざるを得ないだろう。韓国やイタリアのように、病院ではない療養施設を緊急に設置してそこに収容しなければならないかもしれない。そうした準備の議論を併せてやらないと不誠実だ。
検査方法が今のままでよいというのならば(私も原則としてそう思うが)、風邪・肺炎症状の人が、感染が特定されなくても自宅療養できるように公的支援を行う必要性を認識すべきだ。自宅療養・看護での感染の危険を減らし、仕事を休むに休めない状況がないように労働法制で支援し、緊急の給付で財政的負荷を下げることが肝心だ。そうせずに抑制された検査を支持するだけでは、熱や咳があるのに「すぐには医者に行くな」「自宅療養しろ」と言われて我慢し、困っている人たちを意識の外に押しやりかねない。
反省を込めて言うが、感染症への不安を持ち、風邪や肺炎で苦しんでいる人の負荷を下げることが大事なのであって、政府や反政府論者の間違いを批判すること自体を目的にしたり、権力者や権力批判のワイドショーを馬鹿にすること自体に熱中するのは適切ではない。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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