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2026年9月22日火曜日

政策金利引き上げとは「インフレを抑止」するのではなく「景気を冷まして物価を下げる」もの

 常識に反することを書くが,日銀の政策金利引き上げによっては,厳密な意味でのインフレは収まらない。金利上昇は,景気を冷やして物価を下げるものである。両者は異なる種類の物価変動である。

 日銀が政策金利を引き上げた場合,インターバンク市場の金利が上がり,銀行同士がお金の融通をたがいにしづらくなる。銀行は,その分だけ,自ら準備金を積み上げるか,あるいは貸出金利を上げるかして補わなければならない。したがい,銀行は企業に対して,貸し出しを増やしづらくなり,より高い金利でないと貸せなくなる。企業は銀行から借りづらくなり,より高い金利を払わないと借りられなくなる。企業活動が伸び悩む。したがい,財・サービスの生産が拡大しにくくなる。財・サービス市場では需要が弱くなり,物価が下がる。金融市場では,銀行への返済に対する新規貸し出しの割合が減って,通貨供給量の伸びが抑えられる。財・サービス市場の動きと通貨供給量の伸縮は対応している。通貨供給量だけが抑えられるのではない。端的に,景気が悪くなるから物価が下がるのである。日常用語での「インフレ=持続的物価上昇」は抑えられるが,厳密な意味での「インフレ=貨幣の過剰発行による名目的物価上昇」が抑えられるのではない(※1)。

 したがい,日銀の政策金利引き上げの際には,物価だけが下がるのではなく,景気が冷え込むことを覚悟しなければならない。

 それでは,厳密な意味でのインフレはどうすれば抑えられるかというと,財政赤字を縮小するしかない。完全雇用の状態や,何らかの理由で設備や労働力が追加されにくいときに(※2),財政赤字を通して通貨が外生的に供給されるとインフレが起こる。すでにインフレが生じている時に財政赤字を適度に縮減すると,不況に陥ることなく厳密な意味でのインフレ(名目的物価上昇)を抑えることができる(もちろん過度に引き締めれば不況になる)。

 ただし,財政赤字の縮小と言うのは,現実には社会全体に均等に作用せず,特定分野への政府支出の削減を通して行われる。そのため,特定分野での需要を減退させ,そこから供給超過で物価下落(一時的または実質的物価下落)を招き,この分野を起点とする設備遊休,失業を誘発してしまう可能性もある。この場合は,やはり景気を冷ます。

 まとめよう。マクロ的に言えば,政策金利上昇は必ず景気を冷まし,財政赤字縮小は程度が適切であれば,ほんらい物価だけを抑える。ところが,政策金利上昇は社会全体に比較的均等にに影響が出るのに対して,財政赤字縮小は,実際には特定分野に集中的に作用することで,やはり需要を減退させるリスクがある。このような理由で,両者は本来違う作用を持つのに,その違いが見えにくくなるのだと私は理解している。

※1 インフレーションの定義,名目的,一時的,実質的物価変動の区別について詳しくは,拙稿「物価変動分類論:インフレ,デフレ,遊休,バブルと金融・財政政策」TERG Discussion Paper, 492, 1-20, 2025年1月を参照して欲しい。https://doi.org/10.50974/0002002920

※2 日本の場合,家庭が専業主婦と高齢者と言う形で,賃金が払われなくとも助け合いである程度まで暮らしていける,かつ社会的要因によりすんなりとは労働力化しにくい潜在労働力を抱えている。こうした労働力がまだ家庭にあって,完全雇用になっていなくても,インフレになっている可能性がある。

2026年9月20日日曜日

「新・宇宙経済」(New Space Economy)に関する講演会(10/13開催)

 このたび経済学研究科の共催を得て「新・宇宙経済」(New Space Economy)に関する講演会を開催いたします。The Oxford Handbook of the New Space Economyが出版されたことを記念し,編者のAnthony P. D’Costa教授に講演いただくものです。ご関心のある方々に参加をいただければ幸いに存じます。学外の方もオンライン・対面で参加いただけます。

日時:2026年10月13日(火)15:00-17:00
場所:東北大学大学院経済学研究科第3講義室(仙台市青葉区川内27-1)
講師:Anthony P. D’Costa, Honorary Professorial Fellow, University of Melbourne
演題: “Industrial Life Cycles, Innovations, and the Emergent New Space Economy”
使用言語:英語
入場:無料(会場定員150名。オンライン参加可能)
主催:川端望,福嶋路,藤原綾乃,秋池篤,グエン・チ・ギア,グエン・キム・ガン(経済学研究科教員)
共催:東北大学大学院経済学研究科

問い合わせ:nozomu.kawabata.b1#tohoku.ac.jp (#を@に置き換えてください)

会場:マップのC18中講義棟2階です
https://www.tohoku.ac.jp/map/ja/?f=KW_C18

フライヤーダウンロード
https://drive.google.com/file/d/1eGntkw4dQR-8jiCeUnFass-uLyCXlLBu/view?usp=drive_link

参加申し込み: こちらより10月5日(月)までお申し込みください。 https://forms.gle/VMyoa5WiDD9KqCtn7





2026年9月18日金曜日

消費税減税について,何を懸念すべきなのか

  消費税減税に対する懸念の報道の仕方は,何かおかしいのではないか。

 主なリスクは以下の二つにあると思うのだが,このように報道されることが少ないのではないか。

1.「財政赤字が大きくなり,その結果インフレを加速する。消費者にとっては,せっかく消費税減税で楽になってもインフレで打ち消される。さらに,このインフレは政府の債務と民間の預金を目減りさせる,ステルス増税だ」。

2.「財政赤字が大きくなってインフレ懸念が高まると,長期金利が上昇し,企業がお金を借りにくくなって景気が悪くなる」

 以下は報道されており,これは妥当である。

「財政赤字とインフレへの懸念から円価値が低く評価されて円安となり,輸入物価がますます高騰する」

 以下のような報道が多いと思うが,的を外していないか。

「財政赤字で長期金利が上がって住宅ローンの金利も上がるから人々が苦しくなる」と言う報道→まちがってはいない。しかし,話の一部を取り出して全体扱いしていないか

「財源を確保していないから無責任だ」という報道→政治的態度への批判はよいが,減税したら何が起こるのかわからないので経済的には意味がない

「財政赤字で政府が借金を払えなくなる」と言う報道→日銀が政府に反逆すればあり得るが,まずない。日銀が国債を買い上げざるを得ないので,政府は破産しない。その代わりにインフレが加速する

 なお公平のために言うが,もし諸要因によって1と2が起こらなければ,消費税減税はとくに危機を引き起こさないだろう。例えば石油危機によって半年以内に不況となり,遊休設備と失業者が増えるようであれば,来春の消費税減税はそれなりに有効である。また,逆に石油危機が鎮静化して,ややインフレ気味の景気拡大が続いて税収増により財政赤字拡大が抑えられ,むしろ政府債務縮小効果の方が大きなり,かつ人々がステルス増税を問題視しなければ、それが金融市場から評価されて長期金利は上がらず,円下落の懸念も遠のく。どっちに転ぶかを現時点で断言するのは難しい。

2026年9月10日木曜日

AIで自分の授業を文字起こし

 経済学入門A=マルクス経済学入門を第2学期にやらねばならないが,前回やったのはパンデミック期の2020年度であり,正直細かい部分をよく覚えていない。もともとマルクス経済学原論は,とくに冒頭部分が呪文の暗礁,いや暗誦みたいになりやすい授業なだけに,前回どう工夫してしゃべったのか確認し,うまくしゃべれなかったところを改善しないとまずい。幸い,前回はオンライン講義なので動画がすべてYouTube(非公開)に残っているが,自分がしゃべっているのを21時間,学生みたいに倍速にしても10.5時間聴くのはきつい。そこで文字起こしを企んだ。あいにく,ChatGPTSol5.6ではできないので,課金しているGeminiNotebookでやってみた。ちょっと油断すると勝手に要約しようとするので,何度もクレームを入れ,厳格に条件を指定した。200MB以上のファイルは読み込めないので,大きな動画ファイルを2分割するのはChatGPTにやってもらった。またGeminiは章ごとに全然違う書式でワードファイルに出力するので,最後に27のファイルを一つにまとめて書式を統一するのもChatGPTにやってもらった。結果,約30万字,40×35行で240ページの文字起こしが完成した。分割したところが3秒くらい途切れ,たまに変換間違いがあるが,驚くほどちゃんと文字になっている。昔は講演を文字起こしするというと時間もお金もたいへんかかったものだが,2種のAIの課金と約半日の手間でできた。これでスライドや講義の改良に使える。こんな格調の低い講義をしているのかと言う批判は甘んじて受ける。

 しかし,こうしたAIの活躍ぶりを学生の視線に立って見ると,授業を録音しておいてAIに文字起こしさせればやはり簡単にできるし,それをもとに要約させることもできるし,過去問を解かせることも,「こんな問題が出たらどう答えればよいか」と言う想定問答もできるということではあるまいか。オンライン化とAIで講義の在り方も変わるが,学びの在り方も変わっていくのだろう。それでどこに行き着くのかわからないが。







2026年9月9日水曜日

Ka-Bata公式ページ復旧しました

 Ka-Bataホームページ,復旧いたしました。次年度ゼミ生募集に間に合ってやれやれです。

http://www2.econ.tohoku.ac.jp/~kawabata/index.htm



クリーブランド・クリフス社の一部の製鉄所は,「邪悪な日本」の投資がなければ存在または存続できなかった

 クリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベスCEOの発言が報じられている。 「中国は悪だ。中国は恐ろしい。しかし、日本はもっと悪い。日本は中国に対してダンピング(不当廉売)や過剰生産の方法を教えた」 「日本よ、気をつけろ。あなたたちは自分が何者か理解していない。1945年...