この『東京新聞』11月9日の記事※3のように,現在審議に入ろうとしている入管法改正を「外国人労働者の受け入れ業種や規模は明らかになっておらず「生煮え」「拙速」の批判は強い。日本人雇用への影響を懸念する声のほか、外国人を使い勝手の良い労働力とみなす問題点も挙げられている」という議論は多い。それは,これ以上の誤りを犯さないための批判としてはまちがってはいないが,既に存在する問題をどう解決するかという前向きの方向に踏み出していない。
私の意見では,まず技能実習生との関連では,最低限,以下のことが必要だ。だからこそ拙速を排さねばならない。しかしそれを何もせず現状を維持する口実にしてはならない。あと1年間かけてよりよい法案と計画を整備し,実行すべきだと思う。
1)まず「技能実習」で働いている20数万人プラスアルファ程度の人数を「特定技能」に円滑に移行できるようにすることを明確なテーマとした計画を立てること。その内容には以下を含めること。
2)転職の自由がなく実習先に従属させられやすい「技能実習」の要件を厳格にして実習の内実があるものだけに絞り,人数を大幅に縮小させること。
3)「特定技能」ビザでの外国人労働者の受け入れ枠を決定する仕組みを整備し,無限定に受け入れて,不況になったらあぶれさせるという事態を招かないようにすること。
4)技能実習で横行する違法な労務管理を「特定技能」で繰り返さないように,労働基準監督,労働者支援の体制を強化すること。
5)そのためにも来日時点での日本語能力の要件は高めに定め,来日後の日本語研修の体制を費用負担のしくみを含めてつくること。
なお,今回「特定技能」には小売業での労働は含まれない見込みであることから,「留学」ビザで来日してコンビニ等で働く状態の改革は,別途考える必要がある。
※1法務省「在留外国人統計表」。
※2日本語教育振興協会「平成29年度 日本語教育機関実態調査結果報告」
※3「『除染作業強制』『残業代300円』 外国人実習生窮状訴え」『東京新聞』2018年11月9日。
※12月9日追記。入管法改正案成立を受けて以下を書きました。
私は 5年前から大田区で外国人子弟への日本語教育のボランテイアに従事している。その経験から言えば、日本の社会は 外国人を生活者として受け入れる社会的な受け入れ基盤は全く不十分と言わざるを得ない。下流労働者として利用しながら その子女の教育を受ける権利を 「日本国憲法」が全ての国民に権利として付与しているにも関わらず 認めていない。勝手に入国してきて 勝手に働いていると解釈している。だから彼等の「権利」は認めない。「恩恵」だと言いつのっている。
返信削除そういう日本人の社会基盤を変えない限り、「入管法改正による外国人労働者受け入れ」は日本の発展に繋がらない。
「お花畑」と言われても 日本国憲法が定める 国民の権利と義務は 日本の地に住む全ての人々に あまねく及ぶもので有ることを 覚悟しなければ先には進めない。
コメントありがとうございます。憲法論としては,日本国憲法のエイドドラフトではpeopleとなっていたところのいくつかを「国民」にしたのが,そもそもよくなかったと思います。日本国民の権利・義務であるべきものもありますが,国籍に関係なくすべての人々の権利・義務であるべきものも多いです。ご指摘の通り,もっと覚悟をもってよく考えねばなりませんね。たとえば,受け入れを拡大するなら明らかに必要な日本語教育の体制も十分措置されていないと思います。もっときちんと準備をしないといけませんし,そのために大学も新しい役割を求められると予想しています。
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