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2018年10月15日月曜日

未来へつなぐべき心とは何か:靖国神社の宮司退任に思う

 宮司が退任された靖国神社のサイトに行くと,「未来へつなぐ靖国の心 平成31年靖国神社御創立150年」と大々的に宣伝している。また神社の由緒として「国家のために尊い命を捧げられた人々の御霊みたまを慰め、その事績を永く後世に伝えることを目的に創建された神社です」と書かれている。
 
 たいへん正確なことだ。150年の歴史しかなく,明治以後の国家の側について亡くなった軍人・軍属だけを祀っているのだ。日本の伝統とは関係ないのだ。

「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう思わん? どこを慰霊の旅で訪れようが、そこには御霊はないだろう? 遺骨はあっても。違う?」(小堀宮司発言)

 平成天皇が訪れた地で亡くなられたのは,日本の軍人・軍属だけではない。おおぜいの日本の一般市民や,交戦相手国の軍人や一般市民が亡くなったのだ。平成天皇は,そうした,靖国神社が決して祀ろうとしない人々を含む,戦没者すべての霊を慰めようと旅をされた。確かに,平成天皇は靖国神社から遠ざかっている。

 小堀宮司の発言は,靖国神社の立場を正確に反映している。日本国家の側に立って亡くなった軍人・軍属だけを祀るわが神社に参拝せよ。他の戦没者のことは知らない。それが靖国神社なのだ。だから,靖国神社社務所は,宮司の「不穏当な言葉遣い」だけを問題にして,発言内容に問題があったとは言わなかったのだろう。

 靖国神社の,戦争の犠牲者に対する姿勢は,たいへん首尾一貫している。だが私は,未来へつなぐべき心は,このようなものではないと思う。

靖国神社

「靖国神社宮司退任について」靖国神社社務所の画像が掲載されている,「ゴー宣ネット道場」2018年10月10日。

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