砂浜で老人が「花はとっくに死んでいるのだ」と言えば,子どもたちは「そうだ,死んでいるのだ!」と唱和する。そして忽然と消える。北斗星司(ウルトラマンA)は,猿人に変身して火を噴く老人に崖から落とされて負傷する。しかし,そのこと自体をTACの仲間に信じてもらえない。いや,それでも南夕子(ウルトラマンA。当時合体変身だった)は信じようとするのだが,二人で事件現場に行って見ると,砂浜自体がない。北斗は,異変を告げたはずなのに,逆に自らが異常とされ,疎外されていく(まあ,北斗隊員はいつもそうだったけど)。
脚本を自ら書いて監督した真船禎氏のインタビューによれば,氏は戦後直後の価値観の急転換を念頭においてこの話を書いたのだという。
「だから,あそこで一番やりたかったのは,老人が子どもたちを集めて,「海は青いか?」「海は青い」と答えると,「違う!海は黄色だ」って言うと,海が本当に黄色になっちゃう。それが洗脳っていうものですよ。でも,「この人は怖いから,言うとおりにしとこう」だったら,まだいいんですよ。一番怖いのは,本当に黄色く見えちゃうっていうことなんです」
「僕は小学生時代に,信じて死ねって言われて,死ぬつもりだった。ところが一夜明けたら,今から生きろと。命が大事だって。何が真実なんですか?」(ともに84ページ)
それでも30分のヒーロー番組だから,真船監督はBパートでAを勝利させ,真実はこちら
『特撮秘宝』第8号,洋泉社,2018年。
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