製鉄プラント小型化の潮流が強まっていることについて,『日刊鉄鋼新聞』が記事にした。小型化の中心は薄スラブ連続鋳造機とコンパクトストリップミルの直結システムだが,条鋼のマイクロミル,中型高炉もこの潮流に加えられている。
薄スラブ連鋳のもともとの目的は,設備当たり生産量が小さくても熱延コイル生産に参入できるようにすることだった。薄スラブ連鋳に直結したストリップミルならば,最小効率規模が100万トンにでき,400万トン程度必要なコンベンショナルなホットストリップミルよりはるかに低くなる。こうして薄スラブ連鋳は,先進国の電炉メーカーと新興国の高炉・電炉メーカーが鋼板分野に参入する手段として用いられるようになった。特に中国の場合,小型・中型高炉技術は国産のものがあるため,これと薄スラブ連鋳を組み合わせて銑鋼一貫生産する方式が複数企業によって採用された。この動きは,拙著『東アジア鉄鋼業の構造とダイナミズム』※1に記したように,実は1990年代から顕著になっていたのだが,このところ加速していることは確かだろう。
その最大の理由は,この記事に書かれているように品質の向上により適用範囲が広がったことだと思われる。従来,薄スラブ連鋳-コンパクトストリップミルによるホットコイルは,用途が建設用に限定されていた。私が2000年代後半に調査したタイの二つのミルも(拙稿「タイの鉄鋼業」※2参照),適用範囲を広げることに困難を抱えていた。ところが,現在では「エネルギー用の鋼管や一部の自動車用途にも耐え得る」と報道されている。
アメリカの電炉メーカーによる鉄鋼業界の破壊disruptionは,C.クリステンセンがローエンド型破壊的イノベーションの重要例としたものである。薄スラブ連鋳ーコンパクトストリップミルによる業界の破壊disruptionは,世界的規模で新たな局面を迎えているのかもしれない。
「製鉄プラント『小型化』ブーム」『日刊鉄鋼新聞』2018年10月9日(冒頭のみネット掲載)。
※1川端望[2005]『東アジア鉄鋼業の構造とダイナミズム』ミネルヴァ書房。
※2川端望[2008]「タイの鉄鋼業:地場熱延企業の挑戦と階層的企業間分業の形成」(佐藤創編『アジア諸国の鉄鋼業:発展と変容』日本貿易振興機構アジア経済研究所,251-296頁)。
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