米中の関税引き上げ合戦でどっちが勝つかなどと考えるのは非常識で,問題の立て方がおかしい。アメリカが関税を引き上げれば中国からの輸入品が高くなり,代わりに別の国から輸入することにしても,以前よりは輸入価格は上がってしまう。丸損するのはアメリカの消費者である。消費が落ち込めば,輸入品を使って製造や販売をする企業も困る。利益が増大するのは,関税引き上げのおかげで国内生産を増大させられる分野の企業だけである。また,そうした産業では雇用も維持される。しかし,その分だけ,本来アメリカに優位のある産業の拡大は妨げられ,雇用は増えなくなる。所得と雇用に与えるトータルの効果は,特別な条件がなければマイナスである。
つまり,自国政府が自国内の企業と労働者と消費者を苦めるだけのことだ。
私は,具体的な条件の下で様々な修正が必要であるとしても,自由貿易の効用と保護主義の弊害に関する,この基本ロジックは支持する。
「アングル:米国の対中追加関税、自国企業に与える影響」ロイター,2019年5月25日。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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