1987年のゴルバチョフ訪米,中距離核戦力(INF)全廃条約直前のことだったと思う。アメリカのテレビで,レーガンとゴルバチョフの人形が会話しているものがあった。
レーガン「アメリカでは何を食べたい?」
ゴルバチョフ「○○と××と,,,,ビッグマックは絶対さ!」
若者には説明を要する。かつて社会主義国には,多国籍民営企業マクドナルドは出店していなかった。また,1968年に開発されたビッグマックは,当時のマクドナルドでは最上級メニューであった。
マクドナルドがゆたかな西側諸国のイメージを代表していたことは,1990年1月31日にモスクワにマクドナルドがオープンしたときに3万人の顧客が押し寄せたことで明白になった。時代は大きく変わっていた。私はその光景をテレビで見ていたが,「マクドナルドなんかどうでもいいじゃないか」と思う気持ちとブラウン管の中の現実に折り合いが付けられなかった。
やがてソ連は崩壊してロシアに戻り,市場経済化とグローバル化は,褒め称えるに値するかどうかは別としても,不可避の流れになったように見えた。1993年,アメリカからの帰りの飛行機の中で読んだAdams and Brock, Adam Smith goes to Moscowの表紙にはマクドナルドモスクワ店開店日の写真が使われていた。私は2000年にこの本を訳し,またベトナム市場経済化支援プロジェクトに参加して,グローバリゼーションを不可避と認めた研究や提言を行うようになった。
2022年3月8日,ロシアのウクライナ侵攻を受けてマクドナルドはロシアの850店舗すべてを閉鎖すると発表した。時代は一回りしたのだ。そして私は,「マクドナルドなんかどうでもいいじゃないか」とは思えなくなった。
0 件のコメント:
コメントを投稿