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2022年3月25日金曜日

財政政策の分類。仮に中立命題が正しいとしても「小さな政府」がよいということにはならない:動画・現代資本主義におけるマクロ経済政策第24-25回

  講義サンプル動画「現代資本主義におけるマクロ経済政策」。財政政策論に突入。

 第24回は経済への作用の仕方によって財政政策を分類しただけだが,分類の仕方は小野善康氏の理論を踏まえたつもりだ。

 小野氏のマクロ経済政策論で目を開かされたのは,そこに「ゆたかな社会では,問題は貨幣ベースでの所得だけでなく,実物資源が有効に活用され,有用なことがなされているかどうかにも注目しなければならない」という視点が入っていることであった。もちろんここの実物資源とは労働力を含むのであって,失業とは「労働力という資源が有効活用されていない社会的無駄」ということになる。

 この視点からすると,穴掘り・穴埋めの公共事業と,今後役に立つ公共施設を建設する公共事業とでは,例え貨幣ベースの総需要が同金額であっても意味がまったく異なる。また,むだに遊休している貨幣を課税で徴収してそれを財源に有効な公共施設の建設に支出する場合のように,総需要はプラスマイナスゼロ,財政収支もプラスマイナスゼロであっても実施した方がよい財政政策もあることになる。こうしたことが起こるのは,自由放任の下では貨幣と実物資源が自動的に結びつかないからだ。結びつけるには政策が必要なのだ。

 この動画は,小野氏の観点を確認した上で,財政政策の有効性,財政赤字の捉え方に進む。しかしこれとは別に,「ゆたかな社会」における貨幣視点と実物視点については,別の機会に別な形で発展させて次年度の講義に活かしたいと思う。

 第25回からは,財政政策の有効性をめぐる諸見解を3回に分けて配信。まずは中立命題についての紹介と相対化である。仮に中立命題が正しいとすれば,赤字財政により有効需要を拡大することは出来ない。しかし,そうだとしても,再分配による消費性向の引き上げ,公共事業による失業吸収,公共事業による有益な施設や制度の拡充,それらによる加速度原理の作用は可能である。なぜかというと,これらは第24回でも述べたように,追加課税と追加支出が等しく,財政赤字を拡大しなくても,課税の仕方によっては可能だからである。例えば,遊休している貯蓄に課税したうえで支出すればよい。したがって,仮に中立命題が正しいとしても,「小さな政府が正しい,財政政策は最小化すべきだ」ということにはならないのである。

作用経路から見た財政政策の分類 現代資本主義におけるマクロ経済政策㉔



財政政策の有効性(1)中立命題による裁量的財政政策否定論 現代資本主義におけるマクロ経済政策㉕




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