Reuters BreakingviewsのコラムニストYawen Chen氏は,「中国はロシアへの対応で綱渡りを強いられており、しかも足を踏み外す危険がどんどん高まっている」「中国がロシアを手助けし過ぎると、自らも火の粉を浴びかねない」と評価している。これは主に,貿易取引を人民元建てで決済することに即した話だが,経済制裁全般に言えることだ。
ロシアのウクライナ侵略に対する経済制裁の結果は,経済的な意味でのグローバリゼーションの中断か終焉かもしれない。とすれば,中国が対応に迷うのも当然だ。中国は,過去30年間,WTO加盟をはじめとする貿易・投資の自由化へのコミットメントを通して経済発展を遂げた。国家権力の利益の観点からあちこちに留保をつけることはあっても,全体としてはグローバリゼーションの受益者であった。そのためのルールづくりがアメリカや西欧諸国に握られていることを不満に思い,これを自らの手に奪いたいという要求は強めているが,経済的グローバリゼーションを否定する立場には立っていない。だからCPTPPにも加盟申請をしているのだ。
したがって,中国政府は,政治的にはアメリカやEUよりロシアに親近感を覚えるとしても,経済的グローバリゼーションの中断や終焉につながる行為には加担しづらい。この危機にあって中国とロシアの経済関係は深まらざるを得ないが,まだ中国とロシアとそれに協調する諸国だけで,グローバリゼーションの新ルールを確立できる局面でもない。中国の経済発展の見地からすれば,ロシアの行為はどんなによく見ても早まったものであり,普通に見れば近視眼的で余計なことであろう。しかし,だからといってアメリカとEUに同調することも政治的に難しい。これが中国政府が,今回,迷いのある綱渡り的対応になる経済政策上の理由であると思う。
Yawen Chen「コラム:ロシア対応「綱渡り」の中国、制裁の火の粉浴びる危険も」ロイター,2022年3月2日。
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