当ゼミの後期課程修了生,佐藤千洋さんの博士論文「アーキテクチャの位置取り戦略と製品開発組織 –電子部品メーカーの車載事業傾斜を事例とした分析-」が東北大学機関リポジトリTOURに全文掲載されました。基礎になった論文は査読を経て『赤門マネジメント・レビュー』と『工業経営研究』に掲載されています。
佐藤さんの論文の特色は,製品開発研究,アーキテクチャ研究の蓄積を踏まえ,これを一歩進める論点を提起して事例研究を行ったことです。まず,アーキテクチャの位置取りにおける依存性と戦略性の把握です。自社および顧客のアーキテクチャをそれぞれ孤立的にとらえるのでなく,相互に影響を与えあうものとしてとらえ,また経営者にとって所与として決定されるものではなく,戦略的に変化させ得るものとして把握しました。次に,アーキテクチャの位置取り戦略と開発組織の相関性の把握です。これまで自社の製品アーキテクチャと製品開発組織の相関性について研究が積み重ねられてきましたが,顧客製品のアーキテクチャを含めて開発組織との関係を論じる視点を打ち出しました。そして専業電子部品メーカーのイリソ電子と総合電子部品メーカーのアルプス電気の車載事業傾斜について比較事例分析を行いました。
<博士論文>
佐藤千洋「アーキテクチャの位置取り戦略と製品開発組織 –電子部品メーカーの車載事業傾斜を事例とした分析-」
http://hdl.handle.net/10097/00125764
雑誌掲載論文
佐藤千洋(2018)「総合電子部品メーカーのアーキテクチャ戦略と開発組織の適合性 : 車載市場への傾斜を踏まえて」『工業経営研究』32(1), 16-27。
https://ci.nii.ac.jp/naid/40021581969
佐藤千洋(2018)「電子部品産業における専業メーカーの競争優位:アーキテクチャ戦略と製品開発体制の適合性の観点から」『赤門マネジメント・レビュー』17(3), 111-130。
https://doi.org/10.14955/amr.0170607a
国際会議報告
Chihiro Sato (2016), A Study on the Business Strategy of Highly Profitable Electronic Component Manufacturers, Proceedings of the 2016 International Conference on Industrial Engineering and Operations Management
Kuala Lumpur, Malaysia, March 8-10, 2016.
http://ieomsociety.org/ieom_2016/pdfs/136.pdf
学会報告
佐藤千洋(2015)「高収益部品メーカーにおける製品戦略 : キーエンスとヒロセ電機の比較」『イノベーション学会年次大会講演要旨集』30(0),2466-469。
https://doi.org/10.20801/randi.30.0_466
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
フォロワー
登録:
コメントの投稿 (Atom)
ジェームズ・バーナム『経営者革命』は,なぜトランピズムの思想的背景として復権したのか
2024年アメリカ大統領選挙におけるトランプの当選が確実となった。アメリカの目前の政治情勢についてあれこれと短いスパンで考えることは,私の力を超えている。政治経済学の見地から考えるべきは,「トランピズムの背後にジェームズ・バーナムの経営者革命論がある」ということだろう。 会田...
-
山本太郎氏の2年前のアベマプライムでの発言を支持者がシェアし,それを米山隆一氏が批判し,それを山本氏の支持者が批判し,米山氏が応答するという形で,Xで議論がなされている。しかし,米山氏への批判と米山氏の応答を読む限り,噛み合っているとは言えない。 この話は,財政を通貨供給シ...
-
文部科学省が公表した2022年度学校基本調査(速報値)によれば,2022年度に大学院博士課程に在籍する学生数は7万5267人で,2年連続で減少したとのこと。減少数は28人に過ぎないのだが,学部は6722人,修士課程は3696人増えたのと対比すると,やはり博士課程の不人気は目立...
-
「その昔(昭和30年代)、当時神戸で急成長していたスーパーのダイエーが、あまりに客が来すぎて会計時の釣銭(1円玉)が用意できない事態となり、やむなく私製の「1円金券」を作って釣銭の代わりにお客に渡したところ、その金券が神戸市内で大量に流通しすぎて」云々というわけで,貨幣とは信用...
0 件のコメント:
コメントを投稿