フォロワー

2024年8月23日金曜日

「中国がくしゃみをすると,世界に嵐が起こる」,それが鉄鋼業

 「中国の鉄鋼過剰、世界揺るがす-業界全体が窮地に陥る恐れ」という記事がブルームバーグから配信されている。なぜ中国という一国の過剰生産が世界を揺るがすからというと,規模がバカでかいからである。

 中国は世界の鉄鋼生産の半分を占める超製鉄大国だ。2024年の生産量は不況が続くとしても10-11億トンになると予想できる。

 そして,2024年の中国からの鉄鋼輸出は1億トンを超える可能性がある。これは,前回,貿易摩擦を激しくした2015年の1億1200万トンと同水準だ。

 ただ,10億トン生産して1億トン輸出するというのは,10%の輸出比率にすぎない。過剰能力を抱えて輸出ドライブをかけると言っても,内需9億トンの方が需要の中心だ。日本鉄鋼業の輸出比率が40.6%に達することを考えれば,その低さは明らかである。おそらく中国の鉄鋼企業からしてみれば,輸出が主力市場にしているという感覚はないだろう。

 しかし,絶対量で1億トンの輸出というのは,大きい。日本の昨年の鉄鋼輸出3242万トンと比べても3倍以上である。輸出品が向かってくる輸入国の鉄鋼業からすれば脅威だ。もっとも,鉄鋼を消費する建設産業や機械工業からすれば大助かりであろう。

 このように,中国鉄鋼業は全体が途方もなく巨大であるために,さほど輸出ドライブをかけず,低い輸出比率であっても,巨大な輸出量となって世界に影響を与える。昔,「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひく」という言葉があったが,鉄鋼業においては「中国がくしゃみをすると,世界に嵐が起こる」のだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ジェームズ・バーナム『経営者革命』は,なぜトランピズムの思想的背景として復権したのか

 2024年アメリカ大統領選挙におけるトランプの当選が確実となった。アメリカの目前の政治情勢についてあれこれと短いスパンで考えることは,私の力を超えている。政治経済学の見地から考えるべきは,「トランピズムの背後にジェームズ・バーナムの経営者革命論がある」ということだろう。  会田...