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2019年7月26日金曜日

採用改革は人事改革,雇用政策改革,大学改革へと連動する

 採用改革について。企業が特定の能力をもった人材を必要とするならば,採用する職種や職務を特定し,その上で,必要な能力について専門試験を行って「就職」させるしかない。その場合,能力さえあれば新卒かどうかは関係ない。この当たり前と思われることが,日本の慣行とは大きく異なる。現状の新規学卒採用では,新卒予定者だけを対象として,入社後にどこでどの仕事に就くのかも指定せず,一律にぼんやりとした「潜在能力」や「コミュニケーション能力」を諮って「入社」させているからだ。

 実際,経団連と大学が作る委員会でも,職務や必要能力を特定した「ジョブ型」の「通年」での採用活動について議論していて中間報告書も出している。この,採用の枠組みをどうするのかという議論からブレて妙な精神論になると,まったく改革されないだろう。

 ただ改革をして「ジョブ型通年採用」を本格化すると,企業も大学も政府もただではすまない。

 一方において企業は入社年次が「同期」のものを一律に管理し,初めは年功的に処遇して徐々に差をつけていくという慣行を止めねばならない。今度こそ年功序列を変えるしかなくなる。

 他方,「ジョブ型通年採用」では雇用安定法の年齢制限禁止規定が適用される可能性がある。つまり,新規学卒者に限った採用枠ではなくなる。ほとんどの人が意識していないが,学卒に限った採用は本来年齢差別であり,日本の慣行に配慮して年齢制限禁止規定の例外にしてあるのだ。しかし,ジョブ型採用ならば年齢制限は合理的ではないだろう。そうすると,学生は経験豊かな転職希望者と同じ枠で争わねばならなくなる。

 この枠組みでは,ヨーロッパ諸国と同じく不況期に若年失業者が出るおそれがある。それを防止するための雇用対策がまた必要になる(幸か不幸か,若年人口の減少で構造的に人手不足傾向になりつつあるが)。

 大学は大学で,従来のカリキュラムの延長線上で専門能力を育成できる場合はよいとして,それが無理な大学は,キャリア教育,職業教育を強化しなければ学生を社会に送り出せなくなる。医療,福祉,ビジネス,地域マネジメントなどでの実践的な科目編成を持つ大学が増えていることや,新制度としての専門職大学の設置は,この流れを察知したものだろう。

 専門能力にたけた人材の採用を促進するためには,企業の人事管理全体が,また企業と大学のつなぎ目となる採用活動が,雇用政策が,そして大学が大きく変わることが要求される。この動きは大波となるのか。なるとしたら,企業と大学と政府は飲み込まれずに変わっていけるのか。そこで学問の府としての大学の役割は守られるのか。これは就活だけの問題ではなく,企業と大学の根幹にかかわる問題だと私は思う。

「経団連トップに聞く教育・人材育成とは」日テレNEWS24,2019年7月25日。

<関連投稿>
「『ジョブ型』通年採用は『仕事に即した処遇』と『年齢不問』を意味することは認識されているか:『採用と大学教育の未来に関する産学協議会の中間とりまとめと提言』を検討するにあたって」Ka-Bataブログ,2019年4月23日。
「経団連の『就活ルール』廃止と『提案』をどう受け止めるか」Ka-Bataブログ,2019年2月22日。




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