論文「通貨供給システムとしての金融システム ―信用貨幣論の徹底による考察―」が研究年報『経済学』第81巻に掲載されました。
学説史的には二つのことを言っています。
*戦前から活躍していたマルクス経済学者である岡橋保の信用貨幣論は実は正しかった。近年唱えられている諸々の信用貨幣論よりも妥当なところが少なくない。
*日本銀行や全国銀行協会出身の研究者が,実務を論理化しようと出された著作群は,上記の岡橋説と類似しており,やはり基本的に正しかった。
理論的には,以下のことを述べています。かなりの部分が,多数説に反しています。
*銀行の基本的機能は金融仲介ではなく,信用創造である。
*信用創造による貸し付けとは,商品流通に必要な貨幣の新規供給である。
*返済とは,商品流通に不要な貨幣の退出である。
*当座性預金は支払い手段として機能する限り貨幣の一種である。
*預金貨幣も中央銀行券も手形債務である。既に存在する現金を借りたことによる債務ではなく,支払い約束である。
*預金貨幣も中央銀行券も手形債務であり,信用貨幣である。金債務ではない。金債務ではないから,管理通貨制になっても信用貨幣のままである。
*預金は,誰かが現金を銀行に預けたときに生まれるのではない。銀行が貸付を行った際に生まれる。
*銀行券が発行されるのは,預金が引き出されることによってである。
*預金貨幣と銀行券は金貨でもないし兌換紙幣でもないが,商品流通の必要に応じて流通に入り,また出るという伸縮性を持つ。
*銀行部門全体にとっての準備金は,結局は中央銀行によって供給される。銀行が社会から集めた預金によって確保されるのではない。
*通貨価値が安定している限りにおいて,中央銀行は準備金を必要としない。
*民間金融システムによる信用の膨張だけでは,物価上昇は起きても厳密な意味でのインフレーションは起きない。
*マルクス経済学にも外生的貨幣供給説と内生的貨幣的供給説があり,金融システムについては内生的貨幣供給説が正しい。
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