西浦博教授はこの記事で「リスクを説明した上での選択」を強調し,イビデンスに基づく深刻な予測を発表して「みんなに真剣に行動を考えてほしかったんです」という。それは教授が民主主義を前提にしているからだと思う。日本が独裁国家でないならば,そして私たちが,これからもそうでないようにしたいと思うならば,対策は国家から問答無用で強要されるだけのものであってはならない。私たちが考えて,選び取らねばならない。政府は専門的見地を踏まえて権力を行使し,自らの力の使いようについて市民に明確に説明しなければならない。いずれが欠けても8割は無理なのだ。
6割でいいとは言ってないし,7割から8割とも言っていない。値切っては感染は収束しない。科学に基づく自分の計算では8割しかない。そう伝えることに西浦教授は多大な困難を感じている。社会におけるコミュニケーションの困難と,政治的利害や力関係による事実の捻じ曲げ。行く手を阻む社会の壁と国家の壁を西浦教授は乗り越えようとしている。おかしいのは社会だけでなく国家だけでもなく,両方だ。改めるべきは私たちの行動と権力の振るわれようの両方だ。双方を改めなければ感染は爆発する。
岩永直子・千葉雄登「「このままでは8割減できない」 「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由」Buzzfeed,2020年4月11日。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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