フォロワー

2020年4月2日木曜日

足りないのは本当にPCR検査能力なのか。クラスター追跡能力ではないのか

 4月2日付『日本経済新聞』紙の1面。「コロナ検査、世界に後れ 1日2000件弱で独の17分の1」と題して,日本のPCR検査数が少ないことを問題にしている。

 だが,本当に足りないのはPCR検査とその能力なのか。

 日本のPCR検査数が少ないことについて,これまでは専門家会議により「クラスター追跡と重症者同定のために行っていて,その方が効率よく感染拡大を食い止められるから」と説明されてきた。それでよかったと私も思う。だが,その方針はよいとしても,ここまで感染者数が増えてくると,検査が間に合っていないのではないかという疑問は,確かにわく。

 ただ,ここで注意しなければならないのは,検査数が多くならない理由だ。それによって問題の所在は異なるように思う。

 1)医師がPCR検査を要請しているのに能力が追い付かなくなっているとすれば,問題は検査能力であり引き上げねばならない。

 2)東京や大阪のような感染拡大警戒地域でPCR検査に関する保健所等の方針に何らかの問題があって検査数を抑制しているのであれば,問題は組織運営であり,改めねばならない。

 3)『日経』に書かれていないが,もし医師からの要請自体が追い付かないこと,つまりクラスターの感染者から濃厚接触者を追跡するのがまにあっておらず,必要な診察が間に合っておらず,したがって検査も少ない可能性もある。ネックが検査能力ではなくクラスター追跡能力の方にある場合だ。この場合は,まずクラスター追跡の人員を拡充して追いかけられるようにしなければならない。

 専門家会議会見で尾身副座長は1)にも触れていた。2)疑う意見もあり得る。だが,専門家会議がいちばん強調していたのは,クラスター追跡が人員不足で遅れてしまっていることだった。もしかすると3)なのかもしれない。

 もし3)だとすれば,現在不足しており,拡充すべきはPCR検査能力だけではなく,クラスター追跡の人的能力なのかもしれない。もっとそこに目を向けないと,事態を見誤るのではないか。政府には「PCR検査能力を増やせ!」というだけではなく「クラスター追跡の人員を増やせ」と言わねばならないのではないか。

「コロナ検査、世界に後れ 1日2000件弱で独の17分の1」『日本経済新聞』2020年4が愚2日。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57517460R00C20A4MM8000/

国内における新型コロナウイルスに係るPCR検査の実施状況(2月18日以降、結果判明日ベース)(3/30まで。民間検査会社等によるものを含む)。厚生労働省。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618022.pdf

0 件のコメント:

コメントを投稿

「カネのクラウディング・アウト」再考:超過準備の存在という条件

  従来,私は赤字財政に伴う国債発行は,カネのクラウディング・アウト(金融市場ひっ迫による金利高騰)は起こさず,モノとヒトのクラウディング・アウト(財・サービス・人材の供給ひっ迫とインフレ)は起こすという見地を採ってきた。これは現代貨幣理論(MMT)と同じ見解である。しかし,「一...