ラブロフ外相の「なぜ日本は、第2次世界大戦の結果を全面的に受け入られない世界で唯一の国なのか」発言。
それは第2次世界大戦において旧ソ連が行ったことが不当だからである。
確かに第二次大戦の結果,アジアにおける大日本帝国の植民地支配は断罪された。それはもっともだ。朝鮮半島を併合したこと,中国の一部に満州国などという傀儡政権を立て,他の地域も植民地化しようとしたこと,東南アジアを武力支配したことは否定されてしかるべきだった。
だが,大日本帝国の過ちが許されないからといって,連合国の行ったことがすべて正当化されるわけではない。第二次大戦における日ソ関係において,国際法に違反し日ソ中立条約を破ったのはソ連だ。対等な国際条約によって日本領土となった千島列島や,あまつさえ千島列島でもない歯舞諸島と色丹島まで占領したのはソ連だ。第二次大戦においてソ連が大日本帝国に対して行ったことは,いや中国東北部や千島に居住していた日本人に対して行ったことは,まったく正当化できない。
サンフランシスコ条約において,戦後日本は,かつて植民地支配した領域すべてを放棄することを確認した。当たり前だ。だが,千島列島を放棄しなければならない道義はなかった。戦後の政治の力関係の中で不当に放棄させられたのだ。
南千島は千島でないという不可解な理屈で「北方領土」などという意味不明の概念を創出したのは日本側の混乱だ。しかし,だからといって,第二次大戦においてソ連が行ったことは正当化されない。それを後継国家たるロシアが正当化することも適当ではない。
「日ロは『パートナーには程遠い』、ラブロフ外相が発言」AFP BB NEWS,2019年1月16日。
<参照>当ブログ主の千島問題についての見解はこちら。
プーチンの平和条約呼びかけの問題点と千島列島(北方領土)問題解決の方向 (2018/9/13),Ka-Bataアーカイブ。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
フォロワー
登録:
コメントの投稿 (Atom)
大藪龍介『検証 日本の社会主義思想・運動1』社会評論社,2024年を読んで
大藪龍介『検証 日本の社会主義思想・運動1』社会評論社,2024年。構成は「Ⅰ 山川イズム 日本におけるマルクス主義創成の苦闘」「Ⅱ 向坂逸郎の理論と実践 その功罪」である。 本書は失礼ながら完成度が高い本とは言いにくい。出版社の校閲機能が弱いのであろうが,校正ミス,とくに脱...
-
山本太郎氏の2年前のアベマプライムでの発言を支持者がシェアし,それを米山隆一氏が批判し,それを山本氏の支持者が批判し,米山氏が応答するという形で,Xで議論がなされている。しかし,米山氏への批判と米山氏の応答を読む限り,噛み合っているとは言えない。 この話は,財政を通貨供給シ...
-
文部科学省が公表した2022年度学校基本調査(速報値)によれば,2022年度に大学院博士課程に在籍する学生数は7万5267人で,2年連続で減少したとのこと。減少数は28人に過ぎないのだが,学部は6722人,修士課程は3696人増えたのと対比すると,やはり博士課程の不人気は目立...
-
「その昔(昭和30年代)、当時神戸で急成長していたスーパーのダイエーが、あまりに客が来すぎて会計時の釣銭(1円玉)が用意できない事態となり、やむなく私製の「1円金券」を作って釣銭の代わりにお客に渡したところ、その金券が神戸市内で大量に流通しすぎて」云々というわけで,貨幣とは信用...
0 件のコメント:
コメントを投稿