毎月勤労統計の不正調査に関する特別監察委員会報告書について,たたき台を厚労省職員が書いたことに加え,厚労省幹部らへの聞き取り調査に現役の幹部職員が同席していたと報道されている。
これは,監察委員会の設置の仕方と調査方法自体に問題があるのだと私は思う。報告書の4ページに堂々とこう書いてある。
「今般の事案については、本委員会の設置以前から、弁護士、公認会計士等の外部有識者もメンバーとして参画した厚生労働省の監察チームにおいて、職員への聴取等が行われてきた。本委員会は、調査の中立性・客観性を高めるとともに、統計に係る専門性も重視した体制とするため、厚生労働大臣の指示により、監察チームで行ってきた調査を引き継ぎ、統計の専門家を委員長とし、監察チームの外部有識者、統計の専門家等が委員となる形で、第三者委員会として設置されたものである。」
第三者委員会と言いながら厚労省内部の監察チームのありかたを引きずっている。ヒアリングについても,厚労省の監察チームだった時点で行われたヒアリングを,少なくとも一部使用しているのだ。
厚労省監察チームのヒアリングに厚労省の人間が同席することはありうる。しかし,それでは第三者による調査とはなり得ない。第三者委員会に切り替える時点で,ヒアリングはやり直さねばならなかった。そして,調査報告書は委員自身が書かねばならなかった。もちろん,委員自身が初めから起案するのは大変な作業であり,時間がかかる。しかし,ことの性質上,そうしなければならなかったはずだ。
政府・厚労省が調査結果をあまりに急いで出そうとするからこうなる。早期幕引きを図りたいのだなと疑われても仕方がない。
「勤労統計巡る監察委調査 厚労省幹部が同席 中立性に疑念」『日本経済新聞』2019年1月27日。
「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書について」厚生労働省,2019年1月22日報道発表。
<連載>
「毎月勤労統計調査の不正に関する監察委員会報告書を読む(1)不作為の問題」Ka-Bataブログ,2019年1月26日。
「毎月勤労統計調査の不正に関する監察委員会報告書を読む(3)誰が不正を指示したのか」Ka-Bataブログ,2019年1月28日。
「毎月勤労統計調査の不正に関する監察委員会報告書を読む(4)未復元の事実,復元を開始した事実を隠蔽したのではないか」Ka-Bataブログ,2019年1月29日。
「毎月勤労統計調査の不正に関する監察委員会報告書を読む(5)2004年調査よりも前から不正が始まっていた」Ka-Bataブログ,2019年1月30日。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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