UAEのエミレーツ・スチールは,アブダビ・フューチャー・エナジー・カンパニーPJSC(マスダール社)とともに,水素直接還元鉄のパイロット・プロジェクトを推進している。
エミレーツ・スチールは中東最大規模の鉄鋼メーカーであり,製鉄は直接還元法,製鋼は電炉法で行い,多様な建設用条鋼・鋼管類を製造している。生産能力は直接還元鉄が420万トン,鋼材が350万トンである。
今回のプロジェクトは,水素直接還元の実証を行うもので,水素製造のための電解層はすでに設置中とのこと。
エミレーツ・スチールのプロジェクトは,2031年までに世界最大の水素製造国になろうとするUAEの方針と軌を一にするものだ。
またエミレーツ・スチールは,年間80万トンのCO2を回収し,油田に圧入するCCSプロジェクトも推進している。
ちなみに,JFEスチールはエミレーツ・スチール,伊藤忠商事,アブダビ・ポーツ・グループとともに,直接還元鉄サプライチェーンの構築を進めている。つまりは,エミレーツ・スチールが生産した還元鉄を日本に輸入し,低炭素鉄源として利用しようというものである。おそらく電気炉に投入するのであろう。
これは確かにwin-winの関係をもたらす取引である。そして,日本でも脱炭素に向けて高級鋼製造の電炉化が推進されていることも示されている。だが,次世代製鉄技術,とくに水素直接還元法の開発と実用化において,日本が後れを取っていることもまた明らかである。
「低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築について」JFEスチール株式会社,2023年7月18日。
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