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2022年2月8日火曜日

個人的所有の生成と否定:資本主義への道,アソシエーションへの道 第2回 

 「経済学入門A」のオンライン講義最終回の抜粋,第2回。この講義は小経営的生産様式と自由な小商品生産を区別し,前者が基礎になって後者が成立するのは長い歴史的過程を経てのことであるという風に『資本論』を読んでいます。

 生産様式とは,一定の生産関係の中での生産諸力の運動形態であり,具体的には労働手段と労働の結合の具体的なあり方です。つまり,直接には生産力のありかたであって生産関係のあり方ではありません。しかし,どのような生産関係にフィットするかという適合・不適合があります。そして,もっともフィットする生産関係が名称について「封建的生産様式」「資本主義的生産様式」などと呼ばれるのです。

 小経営的生産様式は,小経営という生産関係にフィットしたものです。小経営は社会全体を長い時期にわたって支配する生産関係ではありません。むしろいろいろな前資本主義的生産関係の中にある経営様式であり,解体する共同体にかわり,また変容する共同体とともに,ゆっくりとはったつしてくる経営様式です。そして,発達し切ると,自由な小商品生産の下での小経営的生産様式になります。商品経済の中で独立した自営農民や独立した手工業者です。そのとき,生産手段の法的所有という意味でも,生産物の経済的取得様式という意味でも,個人的所有が発達します。

 しかし,自由な小商品生産は,社会全体を支配することなく,発達すればするほど資本主義的生産に転化してしまいます。そうすると,個人による生産手段の法的所有は法的建前に過ぎなくなり,大多数の直接生産者は生産手段を持たない賃労働者になります。また,経済的取得様式としての個人的所有は,他人を搾取すればするほどより多く搾取できるという資本主義的取得法則に転化してしまいます。これが個人的所有の第一の否定です。

 この見解は,大野節夫『生産様式と所有の理論 「資本論」における「一般的結論」』青木書店,1979年と栗原百寿『農業問題入門』青木書店(初版,1955年,有斐閣)に強く影響を受けてまとめたものです。いずれも今後アップする動画の第9回で文献リストに掲げています。

資本主義への道,アソシエーションへの道 第2回 個人的所有の生成と否定








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