吉田暁『決済システムと銀行・中央銀行』日本経済評論社,2002年。吉川方人様のご厚意により入手して読むことができた。私が内生的貨幣供給論をあれこれ模索してたどり着いた見地は,貨幣・信用・銀行の一般理論の次元では,故・吉田暁教授の見解とほぼ同じであったことが確認できた。もっと早く気づくべきであった。もっとも,本書は一般理論の書として書かれているわけではない。原論文が書かれた時点でのトピック(CMAなど銀行以外の決済業務への参入と呼ばれた事態やナロウバンク論)に即した論じ方になっているため,その理論的立場は,読者が一定程度努力して読み込む必要がある。
「はしがき」によれば,吉田教授は1955年に東京大学経済学部を卒業された。ゼミナールでは横山正彦氏,研究会では日高晋氏の指導を受け,マルクスのオーソドックス解釈と宇野理論の双方を学ばれた。志村嘉一,林健久,山口重克といった方々が学友とのこと。卒業して全国銀行協会連合会(全銀協)に1985年まで勤務されてから武蔵大学に転身された。私は本書で,吉田教授の内生的貨幣供給論が,経済原論の学びと銀行系エコノミストとしての研鑽の成果であったことを知った。
なお,吉田教授の内生的貨幣供給論と,マルクス経済学内部の外生的貨幣供給論の違いは,以下でよくわかる。
吉田暁(2008)「内生的貨幣供給論と信用創造」『経済理論』45(2), 15-25。
0 件のコメント:
コメントを投稿