たいへん申し訳ないが,私はやはり現代的な経済学者にはなれそうもない。この文章で書かれていることが全く分からない。
著者は,現在のコロナ危機を理解するために,労働者が働けなくなったショックを出発点に,供給ショックが起こっているのか需要ショックが起こっているのかを考えている。例えば,労働者が貯金を切り崩すから金利が上昇するので供給ショックだと,ある種のモデルでは解される,しかし,データを見ると,労働者の消費が落ち込んでいる需要ショックのようにも見える,と論じている。
(引用)「この結論は働けなくなった労働者がいることは所与として,その上で経済の状態が供給ショックに相当するというものです」。
しかし,そんなモデルとで今の現実とどう関係があるのか。そもそもなぜ働けなくなったのか。
働けなくなったということは,解雇されたのだろう。そうなる可能性は二つある。一つは,その労働者が働いていた産業で財・サービスの需要が急減して売り上げが減少したことがもとで,経営者が労働者が多すぎると判断したから解雇されたのだ。もう一つは,需要は元のままなのだがその産業に投入される財・サービスの価格(モノでいえば原料)が供給不足になり,コストが急上昇したか生産が停止して利潤率が下がり,経営が立ち行かなくなって解雇されたのだろう。どちらであるかによって,需要ショックか供給ショックかが判断できる。そういう風に普通は考えるのではないか。
なぜ「働けなくなった労働者がいることは所与として」,その労働者の貯蓄・消費行動から供給ショックか需要ショックかなどと考えるのか。まったくわからない。働けなくなった理由のところで判定すべきではないのか。
久保田荘「コロナ危機は需要ショックなのか供給ショックなのか?」2020年4月8日,早稲田大学ソーシャル&ヒューマン・キャピタル研究所。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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