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2018年12月7日金曜日

『日経』連続記事「景気回復 最長への関門」に見る日本経済の変化と新たな不安

 一昨日から今朝にかけての『日経』1面の「景気回復 最長への関門」(上・中・下)は考えさせられる。よく読むと内容は深刻だ。来年度の「日本経済」講義のヒントになる。掲載されたグラフ3点を見るとわかりやすい。私の観点から再構成すると以下のように読める。
 国内だけを見れば,アベノミクスの超金融緩和とだらだらとした財政拡張が,ようやく,4年もたって,2017年から設備投資増には効き始めたように見える。しかし,消費の方は依然として停滞している。実質雇用者報酬が縮小する悲惨な事態は2016年にようやく止まり,上向きになったが,可処分所得はアベノミクス開始前にわずかに及ばない程度だ。これは,社会保障と税の負担のためだ。
 ところが世界を見ると,米中貿易戦争をきっかけに景気の減速傾向が強まっている。これは外需に依存し,いつまでたっても途上国のように円安を待望する日本産業にとって不気味なことだ。
 設備投資はようやく伸び始めた。賃金は少しずつ上昇しているが,消費は伸びない。これまで依存できた外需は雲行きが怪しくなってきた。それでは,いったい何をつくってどこに売るのか。
 日本経済のこれまでの局面は「アベノミクスで拡張政策をとったが,輸出と企業利益は増えても投資は増えず,雇用は増えても賃金は上がらず消費も伸びない」というものだった。しかし,また別の局面に入りつつあるのではないか。

「景気回復 最長への関門(上)世界経済に頭打ち感 中国の変調、アジアに影」『日本経済新聞』2018年12月5日朝刊。

「景気回復 最長への関門(中)「賢い工場」活発な設備投資 外需と業績、懸念材料に」『日本経済新聞』2018年12月6日朝刊。

「景気回復 最長への関門(下) 力不足の「メリハリ消費」 増えない可処分所得」『日本経済新聞』2018年12月7日朝刊。


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