不意に思い出したのだが,私は前期課程2年の時,松井和夫先生(日本証券経済研究所大阪研究所主任研究員)の経済学部連続講義「証券市場論」に珍しくちゃんと出席していた。昼食を生協のレストラン「ルポー」でご一緒した時,先生を招へいする窓口になっていらっしゃった鴨池治教授(マクロ経済学,金融論)も別の席においでだった。鴨池教授は,こちらにやってきて松井先生の隣に座り,しばらくお話をされていた。アメリカでトービンのQが1を下回っているためにM&Aが誘発されることなどが話題であった。やがて,鴨池教授はご自身の席に戻られた。と,松井先生はやおら私に向き直り,「君,レーニンはな」と,独占と金融資本について語り始めたのである。なるほど,先生はこうやって,証券業界に求められる博学のエコノミストであり,かつ根底ではマルクス経済学者として,たくましく生きていらっしゃるのだなと思った。
日本証券経済研究所大阪研究所主任研究員・後に大阪経済大学教授の松井先生は,もっと思い出されるべき研究者だと思う。同じ研究所に同じ時においでだった奥村宏先生が日本企業・企業間関係研究者として広く知られているように,松井先生はアメリカ企業・企業間関係研究者として,もっと知られるべきだと思う。
松井和夫教授略歴・業績目録。この目録掲載の雑誌論文84本には,『証研レポート』に執筆されたレポートは含まれていない。
http://www.osaka-ue.ac.jp/file/general/5125
松井和夫先生のこと(2014/10/19)Ka-Bataアーカイブ。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
フォロワー
2018年12月27日木曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
「カネのクラウディング・アウト」再考:超過準備の存在という条件
従来,私は赤字財政に伴う国債発行は,カネのクラウディング・アウト(金融市場ひっ迫による金利高騰)は起こさず,モノとヒトのクラウディング・アウト(財・サービス・人材の供給ひっ迫とインフレ)は起こすという見地を採ってきた。これは現代貨幣理論(MMT)と同じ見解である。しかし,「一...
-
山本太郎氏の2年前のアベマプライムでの発言を支持者がシェアし,それを米山隆一氏が批判し,それを山本氏の支持者が批判し,米山氏が応答するという形で,Xで議論がなされている。しかし,米山氏への批判と米山氏の応答を読む限り,噛み合っているとは言えない。 この話は,財政を通貨供給シ...
-
文部科学省が公表した2022年度学校基本調査(速報値)によれば,2022年度に大学院博士課程に在籍する学生数は7万5267人で,2年連続で減少したとのこと。減少数は28人に過ぎないのだが,学部は6722人,修士課程は3696人増えたのと対比すると,やはり博士課程の不人気は目立...
-
「その昔(昭和30年代)、当時神戸で急成長していたスーパーのダイエーが、あまりに客が来すぎて会計時の釣銭(1円玉)が用意できない事態となり、やむなく私製の「1円金券」を作って釣銭の代わりにお客に渡したところ、その金券が神戸市内で大量に流通しすぎて」云々というわけで,貨幣とは信用...
0 件のコメント:
コメントを投稿