私が思うに,いま世界経済において最も懸念されるのはイランを起点とする戦争の拡大による混乱であり,次いでそれが何とか避けられた場合でも続きそうな,原油とそれに連動したエネルギー全般の価格による景気後退である。
しかし,石油にばかり目を奪われている場合ではない。トランプ政権がイランを攻撃する以前から,AIバブルの崩壊が懸念されているからだ。AIは本質的にハードウェアでなくソフトウェアであるが,これを用いてクラウドサービスを行うためにはデータセンターを必要とする。伊豆久氏のレポートによれば,アマゾン,メタ,マイクロソフト,アルファベットはソフトウェア・情報サービス企業のはずなのに,近年設備投資を急速に増やしている(アップルはそれほどでもない)。ところがOlivia Wang氏のレポートによれば,アメリカにおけるデータセンター建設計画は,主に電力がボトルネックとなって着工が遅れており,その計画の30~50%は年末までに稼働開始に至らない可能性が高いというのである。これはイラン攻撃の前の話であることにも注意してほしい。
これまでも工場や光ファイバーケーブルに対して起こったように,データセンターと,それに電力を供給する電力産業に過剰投資が起こっていないのか。AIはどのみち発達する。AIが人間社会に何をもたらそうと,このビジネスチャンスが見過ごされるはずはない。しかし,アメリカを中心にエクイティを用いてファイナンスされる新興産業は,ブームと破裂を繰り返しながら成長する。それが歴史の教訓だ。次回の破裂は迫っていないのかを,よく観察する必要がある。戦争,エネルギー価格高騰にAIバブル崩壊が追い打ちをかける可能性に注意しなければならない。
Olivia Wang, Data center outlook: half of 2026 pipeline may not materialize, Sightline Climate, February 24, 2026.
https://www.sightlineclimate.com/research/data-center-outlook
伊豆久「米国IT企業のデータセンター投資と各社の財務構造」『証研レポート』1753号,2025年12月。
https://www.jsri.or.jp/publication/periodical/report/1753_02/
0 件のコメント:
コメントを投稿