島根大学が2024年度,人事院勧告相当の教職員給与引き上げを4月から実行できず,12月からの改定にとどめたと報道されている。
私が勤務する東北大学はもともと規模が大きいうえに,国際卓越研究大学に指定されたので一息ついているが,人事院勧告相当の給与引き上げもできない国立大学法人が出現していることは深刻である。どうしてこうなるのかというと,簡単に言えば,自助努力ではどうにもならない形で収入が減って支出が増えているからである。
まず収入面。2004年の国立大学法人化以来,主要な収入源の運営費交付金を政府は削減し続けてきた。それも毎年X%という風に機械的に問答無用で削減されるのである。
もちろんどの大学も別の収入源を模索してきたし,政府も科研費については増額させてきた。だから,研究費については,科研費,寄附金,民間との共同研究費,委託研究費も含めて様々な形で確保する努力を行ってきた。しかし,一般企業の方にはわかりにくいかもしれないが,外部から獲得した研究費は,その目的とする研究にしか使えない。何にでも使ってよい研究費とか,正規教職員の基本的給与財源にするということはできないのである(あんまりだという声が届いたのか,最近,一部を給与上乗せに使える研究費が出現しているが)。そして,授業料を勝手に引き上げることもできない。これが収入源の状況である。
一方,支出の方は,物価も賃金も上がらなかった,いわゆる「デフレ」停滞期にはそれほど増加しなかった。それでも消費税の引き上げはきつかった。授業料に価格転嫁できないからである。そして,コロナ明けあたりから物価,とくに水光熱費の上昇が起こり始め,名目賃金もついに上昇を始めた。繰り返すが,価格転嫁はできない。さらにいうと,大学病院も価格転嫁はできない。
こうして,長年の収入減による財政難が,物価・賃金の上昇によって一気に加速したというのが,多くの国立大学法人の状況である。
<参考>
「島根大、給与の引き上げできず 財政難で人事院勧告に対応困難 24年度4~11月分 国の経費減など影響」山陰中央新報→Yahoo!ニュース転載,2025年8月20日。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d46a6c072d3772b980040f536bc36c622406fa9
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