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2020年9月7日月曜日

『日経』よ,しっかりしてくれ。女神を探している場合ではない

 この「成長の女神 どこへ コロナで消えた「平和と秩序」パクスなき世界(1)」という記事,特集の幕を切って落とすもので今朝の『日経』本紙1面に載っているのだが,内容がおそろしくちぐはぐだ。

 いちばんすごいのは,言葉では「世界経済全体」が歴史的に長期停滞に突入しているかのように書いているのだが,実際に書かれていることは「先進諸国の経済」の停滞であることだ。だからおかしな文章になる。例えば「経済のデジタル化も『長期停滞』の一因となる。今週の上場へ準備する中国の金融会社,アント・グループ。企業価値は2000億ドル(約21兆円)と期待され,トヨタ自動車の時価総額に並ぶ」。「成長しとるやないか!」と突っ込まれて当然だ。真正面に出ているグラフも混乱している。経済成長率の要因になる1人当たりGDP成長率と人口成長率を示すのはいい。しかし,前者は米英伊スウェーデンの4か国平均で先進国経済を表しているのに,後者は世界全体であり,何を示したいか不明なものになっている。

 他にも混乱が目立つ。例えば,「経済成長の柱の一つは人口増だった。18世紀以降の産業革命は生産性を高め,19世紀初めにやっと10億人に届いた世界人口はその後125年で20億人に達した」という文章。生産性が高まると人口が増えて経済が成長するというロジックになっている。しかし,人口増加率と生産性向上率が経済成長率の2要因としなければ話が通じない。

 おそらく,先進諸国=世界全体という思い込みに導かれて書き進んだものの,現実には新興国が成長していることを無視できないので混乱し,長期的に先進国が停滞して新興国が成長しているのを,目の前のコロナ危機による世界全体の停滞とごちゃごちゃにして書いたのだろう。女神がいないとか気取っている場合ではない。しっかりして欲しい。

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