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2019年4月13日土曜日

東京福祉大学問題から見える,歯止めなきトップダウンのダメさ加減

 東京福祉大学による研究生としての留学生大量受け入れは,元総長の中島恒雄氏の指示によるものであったという告発があった。

 中島氏は2008年1月に強制わいせつ罪で逮捕され,実刑判決も受けた。以後,東京福祉大学は中島氏が「本学の経営や教育に関与することはない」とホームページで約束した。しかし,実際には大いにかかわっていたことになる。

 実はこのことは以前より,誰あろう,文部科学省大学設置・学校法人審議会によって公式に指摘されていた。東京福祉大学は2012年度より経営学部,大学院経営学研究科を開設すべく文科省に設置申請を提出したが,「元理事長を法人運営に関与させてきていることや、本設置認可申請後に及んで学校法人として不適切な管理運営が行われていたことが確認された」として,設置「不可」の認定を受けたのだ(「」内は判定不可の理由を記した文書より)。

 田嶋元教授は,中島氏が指示を出していた証拠として20011年9月の会議音声を公開したそうだが,これは文科省に設置申請をしていた時期と一致する。

 田嶋元教授もかなり過酷な目に遭われたようだ。東京福祉大学は,まず2012年3月末で教授を雇い止めると通知して,裁判で無効とされた。3年前に卒業した院生へのセクハラ・パワハラを理由に懲戒解雇し,それも1審,2審で敗訴して和解し,謝罪して原職復帰を認めることになった。しかし,さらなる嫌がらせ,雇用契約の不利益変更を迫り,労働審判でそれが否定されると今度は訴訟に移行したようだ。田嶋教授は2018年3月31日に定年退職された。

 田嶋氏に対して,自分が嫌がらせに遭ったから意趣返して告発しているのだろう云々というコメントがネットを飛び交うかもしれないので言っておく。文科省も裁判所も異常な経営を認定しており,どうみても東京福祉大学の方がおかしい。

 いま,大学のガバナンスが取りざたされているが,たいていの場合,「教授会が頑迷で何も決められないからトップダウンにしろ」という方向で議論がなされるのはどうしたことか。むちゃくちゃな行為が行われるのは,たいてい,トップダウンが行き過ぎた場合であり,それに歯止めをかけるしくみが欠如している場合であることは言っておきたい。

「留学生大量失踪の東京福祉大、元教授が緊急会見。元総長が「120億のカネが入るわけだよ」と会議で発言。金儲けのために留学生受け入れか」ハーバー・ビジネス・オンライン,2019年4月10日。

平成24年度開設予定大学院等一覧(判定を「不可」とするもの)

平成24年度開設予定学部等一覧(判定を「不可」とするもの)

「東京福祉大学事件」田嶋心理教育相談室。

「東京福祉大学事件」交通ユニオン。

1 件のコメント:

  1. 本件と直接関係無きもトップダウンの弊害というかガバナンス崩壊の例として自身の経験で、もう30年ほど前所属する大企業の完全子会社(部門のような組織)のトップダウンで(親会社の承認のもと)外国人社員を雇用したところ雇用された社員自身の責任ではないが間接的にビジネス上重大な問題が発生した。 急遽私に解決の指示があり、同社員の学歴を調査したところ中国の某国立大学を入学さえせず卒業との履歴の詐称が判明。これなどは迂闊なトップと親会社のガバナンスの有りようが被雇用者の地位にも大きく影響する例かと。ガバナンスは知識と能力を要することを認識した次第。

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