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2019年2月14日木曜日

合理的で厳しいCO2規制がグリーン製鉄法の開発を促進する

スウェーデンで開発中のグリーン製鉄法HYBRITに関する世界鉄鋼協会の記事。HYBRITは鉄鋼メーカーSSAB,鉄鉱石採掘企業LKAB,電力会社Vattenfallの合弁企業だ。この製鉄法の目的はCO2排出削減であり,その手段は鉄鉱石をコークスや石炭ではなく水素で還元すること。

 日本で開発中のCOURSE50も水素還元を用いるところは同じだが,この記事から読み取れる限り,HYBRITにはCOURSE50と異なる点が二つある。1)直接還元法であること,2)水力で生まれた電気による電解法での水素生産を含んでいることだ。どちらも2030年代の実用化が期待されている。

 ここで経済学者として注目したいのは,次の一節だ。
「当初の研究では,HYBRITの生産コストは伝統的鉄鋼生産プロセスより20-30%高いと見ているが,このギャップは,EUの排出量取引制度によるCO2排出コストの上昇の余地や,期待される再生可能エネルギーのコスト低減によって,時とともに小さくなると期待される」。

 伝統的製鉄法は,現在十分に考慮されていないCO2排出コストをコストに参入せざるを得なくなれば,決して安くない。CO2排出上限規制をクリアーできなければ排出権を購入せざるを得なくなり,コストが上昇するだろうと見ているわけだ(購入できなければ操業を続けられない)。

 合理的に計算され,かつ厳格な上限規制を伴うCO2排出規制があってこそ,グリーン製鉄法は有利になる。そういうCO2排出規制がなければ確かに伝統的製鉄法が有利だろうが,地球はさらなる気候変動に見舞われる。

 なすべきことは,CO2排出規制を回避することか,それとも合理的なCO2排出規制を設計して実行することか。コストが高いと言って新製鉄法の開発を後回しにすることか,それともCO2排出コストを含めれば低コストとなる製鉄法を開発し,選択することか。パリ協定が突き当たっている困難にかかわらず,これは,現代世界鉄鋼業の基本問題の一つであり続けている。

Rachel Mostyn, Revolution at the heart of green steelmaking, World Steel Association, January 2019.

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