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2023年7月17日月曜日

裁判所は「パフォーマンス・ギャランティ」に加担してベンダー/サプライヤーを鞭打つべきではない

 日本の系列・下請け取引,別名サプライヤー・システムにおいては,ユーザーが目的を達成する水準までサプライヤーが品質保証する「パフォーマンス・ギャランティ」が広く見られる。そのことの具体的立証は容易ではないのだが,ソフトウェア開発契約の世界では,紛争が訴訟になり,訴訟のドキュメントによって実情がかなり明らかになるようだ。しかも,この連載によると判例は,「ベンダーの責任を『契約書に書かれたこと』だけではなく、『契約の目的に照らして必要なこと』とする」方向に傾いているらしい。つまり「パフォーマンス・ギャランティでよい」と裁判所が言っているのだ。

引用)「例えばある裁判では、『設計工程以降を請け負ったベンダーに、ユーザーの示す要件定義書の誤りを指摘すべき責任があった』とされた。要件定義書の内容が専門的であり、知見のあるベンダーが誤りを指摘しなければ、契約の目的を達成するシステムを作り得ないという判断だ」。

 しかし,長期相対取引の中でQCDを向上させてそれなりに成長していた製造業のサプライヤーにとってすら,いまやこうした過酷な品質保証基準はマイナスに働いている。もともとユーザー企業のIT部門が矮小で脆弱であり,ベンダーとその下請けに開発を丸投げし,需要の量的変動を調整するバッファとして下請け発注を用いてきたITでは,産業発展にとってマイナスの作用はさらに大きいのではないか。過酷だが選手につきっきりで教えるコーチが「できるまでやらせる」のと,過酷なだけのコーチが「できるまでやれ」とただ言い放つのは,現代ではどちらも問題だが,前者より後者はさらにひどい。だからこそ訴訟にもなるのであろう。裁判所はユーザーに寄りすぎているのではないか。


最新記事

細川義洋「準委任契約だけど、責任は取ってください」ITatmarket,2023/7/3。

引用元

細川義洋「契約書にも民法にも書かれていませんが、「義務」なので履行してください」ITatmarket, 2023/2/20


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