日銀が連続指値オペで国債を買い支えられるかどうか=長期金利を低め誘導し切れるかどうか,それはわからない。しかし,どちらになっても良いことは起きない可能性の方が高い。
買い支えに失敗すれば長期金利が高騰する。企業の資金繰りは悪化し,景気は冷え込む。円安の進行は止まるだろうが,止まったところでエネルギーと食料のドル建て価格も上がっているのだから,景気に対して十分な救いにはならない。日銀は保有国債を塩漬けにすることになる。政府の国債費が増大し,その多くは日銀に入ることになるだろう。不況に向かう時に,事実上の財政ファイナンスがいよいよ強まり,しかも対策を打とうにも新規発行債の金利は高い。財政運営は大きな困難を抱えることになる。
成功すれば長期金利は抑えられ,企業の資金繰りは悪化しない。円安がさらに進行するかどうかは,アメリカ金利の引き上げ期待が続くか,市場に織り込まれてしまうかに依存する。私の意見では,注意すべきは円安よりもマネーストックの膨張である。
現在の指値オペは,やればやるほどマネーストックが膨張するところが,アベノミクス期の買いオペと異なることである。それは,もっぱら銀行から買うのではなく,海外勢を含む機関投資家から間接的に買っているからである。国債は機関投資家→銀行→日銀と流れ,代金は日銀→銀行の日銀当座預金→機関投資家が銀行に持つ口座,と流れる。日銀当座預金のブタ積みで止まってしまい,なんちゃってマネー供給になっていたアベノミクス期とは異なり,真正のマネー供給になっているのだ。
では,国債買い支えで増えたマネーはどこへ行くのか。運がよければ,企業の資金繰り改善と,コロナ期に「強制貯蓄」させられた高中所得層のリベンジ消費があいまって,好況になるかもしれない。日銀は明らかにこれを狙っている。しかし,マネーが高騰した輸入代金の支払いに消えて,不況のままインフレになるスタグフレーションを招くかもしれない。はたまた,バブルを再興するかもしれない。一つには,日銀が金利上昇を阻止すると,すでに価格上昇傾向を見せている不動産への資金流入が一層強まる可能性があり,また急落した欧米市場の株式より日本の方が買いやすくなるかもしれないからだ。
つまり,私の理解では,行く手は日銀が買い支えに失敗すれば不況であり,成功しても,せいぜい高中所得層だけの好況,スタグフレーション,バブルの三択ばくち打ちである。所得が低い人ほど被害に遭う確率は高いだろう。
目の前のことはこのように解釈できるが,問題は,そもそもなぜこのようなことになったのかである。別途整理したい。
続編:「安倍晋三氏には「悪夢のような」現実を作り出した責任がある」2022年6月28日。
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