財政政策の有効性その3。この講義では,リカード・バローの中立命題に対する全面否定論としてMMTを位置付けた。またそれは講義する私の立場としては,マルクス経済学の信用貨幣論,ケインズのある種の解釈,MMTの信用貨幣論の一致するところでもあるとしている。
MMTがなぜ中立命題全面否定論かというと,財政赤字がない状態を正常な状態と見なすのではなく,財政赤字があって,おそらくは徐々に拡大していく状態を正常と見なす理論だからである。正確に言えば,政府が完全雇用という人的資源の完全利用を目標とするならば,そうならざるを得ないという理論である。この認識が一般化すれば,「納税者は財政赤字を出して需要を拡大しようとする政府に対して,将来増税があると予想して支出を増やさずにおく」という行動は合理的でも何でもなくなるのであり,中立命題の前提が成り立たなくなる。
同時にこの講義は,MMTを含む信用貨幣論を,財政をいくらでも拡張できる魔法の杖とはみなしていない。自国通貨建て債務ならば,債務総額やGDP比は問題ではない。しかし,悪性インフレ,バブル,それとおそらく連動する為替レートの急落,金利を下回る成長率が,赤字財政による需要と雇用創造の限界を画すという立場である。
財政政策の有効性(3):MMTによる中立命題全面否定論 現代資本主義におけるマクロ経済政策㉗
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