「日本経済」講義準備。世界経済の動態と格差編。ピケティらのWorld Inequality Databaseを使った所得集中のグラフを更新。対象は個人の税引前所得。2年前に作図した後にデータが更新されており,日本の数値は WIDのチームが作成したMarc Jenmana; Rowaida Moshrif and Li Yang(2020),“Regional DINA update for Asia”にしたがっているようだ。
*日本の上位1%の高所得層(年収1392万円以上)への所得集中度は12.4%で,アメリカ,イギリス,ドイツ,カナダほどではなく,G7では5位。ちなみに中国は日本より高い。
*日本の上位10%高所得層への所得集中度は43.3%で,G7ではアメリカに次いで2位。ちなみに中国も日本より低い。
*今回は,下位50%のデータをとることができたのでグラフを追加。日本では年収が270万円以下の人々が成人個人の50%を占めており,その所得のシェアは19.5%に過ぎない。このシェアは1990年代以後,他の先進諸国とともに低下傾向にあり,G7諸国では4位。なお,G7諸国ではアメリカの極端な低さが目立つ。また中国は改革・開放の進行とともに急速にシェアが低下している。
以前から指摘されているように,日本は1%集中度が低く,10%集中度が高い。そして上位10%とは最新のデータによると年収915万円以上であり,富裕層というほどではない。しかし,その水準に届かない個人が90%だということである。そして,今回確認できたのは,年収270万円以下の人々が全体の50%を占めていることだ。アメリカやイギリスと比べると,超富裕層に所得が集中する問題よりも,下位の低所得層の抱える困難の大きさという問題の比重が相対的に大きいことになる(※)。
※今回,データが2019年まで更新されたのは良いが,過去データもすべて見直された結果,1%や10%の閾値の数値は大きく変わっている。日本の上位1%の年収は,以前は2010年に2161万円以上とされていたが,最新データでは2010年に1193万円以上,2019年に1392万円以上と大幅に低下した。日本の上位10%の収入は,以前は2010年に960万円以上とされていたが,最新データでは2010年は789万円以上と大幅に減少し,2019年は915万円以上となった。なぜこんなに変動したのか,説明が欲しいところだ。
World Inequality Database
https://wid.world/
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