就寝前と仕事の合間を使っただけなのだが,2日間で読み終えた。こう言っては何だが,岩波書店には珍しい,ミステリーのように引き込まれて,すらすらと読める本だ。
著者のこれまでの本と異なり,粉飾決算事件の分析ではない。中心となるのは郵便不正事件とそれに続く,村木厚子氏が起訴されて無罪となった虚偽公文書事件,そして大坂地検特捜部による証拠改ざん事件だ。おそらく,もともとこれらを主要な対象と予定していたのだろう。ところが日産自動車カルロス・ゴーン事件が発生し,それが最後部に置かれることになった。
本書は,経済事件における特捜検察による冤罪の構造を暴いた本なのである。細野氏によれば,ゴーン会長は役員報酬の件にせよオマーン・ルートにせよ,法的には無罪とされるべきなのである。なぜそう言えるのかは,どうか本書にあたられたい。
細野祐二『会計と犯罪 郵便不正から日産ゴーン事件まで』岩波書店,2019年。
2019/6/6 Facebook投稿の再録。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
フォロワー
2019年6月25日火曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
クリーブランド・クリフス社の一部の製鉄所は,「邪悪な日本」の投資がなければ存在または存続できなかった
クリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベスCEOの発言が報じられている。 「中国は悪だ。中国は恐ろしい。しかし、日本はもっと悪い。日本は中国に対してダンピング(不当廉売)や過剰生産の方法を教えた」 「日本よ、気をつけろ。あなたたちは自分が何者か理解していない。1945年...
-
博士課程で留学生の割合が高いのはけしからんという議論が,一部から流されている。しかし,これは外国勢力の陰謀でもなければ,大学経営陣が外国におもねっているからでもない。単に日本が「博士冷遇社会」だからなのである。 これについて冷泉彰彦氏が 「博士課程の奨学金受給者の約4割が留学...
-
中国の日常系アニメ『呼喚少女Call Up ・Girls』のPVがすごいという話。2019年からマンガとしてネット配信されていた作品がアニメ化されたという局面らしい。一瞬,日本のアニメかと思うがセリフも背景の文字も簡体字であるし,制服がジャージっぽいので間違いなく中国である。デ...
-
『ウルトラマンタロウ』の最終回が放映されてから,今年で50年となる。この最終回には不思議なところがあり,それは第1話とも対応していると私は思っている。それは,第1話でも最終回でも,東光太郎とウルトラの母は描かれているが,光太郎と別人格としてのウルトラマンタロウは登場しないこと...
0 件のコメント:
コメントを投稿