私はまもなく60歳で,特撮ドラマと言えば『ウルトラマン』『ウルトラセブン』を再放送で,『帰ってきたウルトラマン』や『仮面ライダー』をオリジナル放映で見た世代です。現代ではほぼ老人会に属しますが,それでも,『忍者部隊月光』(1964-66年放映)は伝説的存在でした。いまでこそ『月光』をYouTubeで見かけることもありますが,私の若い頃にはインターネットがないだけでなく,ビデオデッキも選ばれたエリートしか持っておらず,昔のモノクロ特撮テレビドラマを見る機会はほとんどなかったからです。
『忍者部隊月光』を初めて見たのは,80年代にテレビ埼玉で再放送していたのを録画されたビデオを,SF研の部長が取り寄せて見せてくれた時でした。ただ,CMで「君は埼玉のどんなところが好き?」とインタビュアーが聞くと子どもが「クルマが少ないところー!」と『翔んで埼玉』みたいな応答をしていたので,本当に80年代の再放送だったのかと不思議に思っています。
ある時,『忍者部隊月光』の原作は,かのタツノコプロダクションの創設者である吉田竜夫先生の漫画『少年忍者部隊月光』であり,そこでは設定が違うと聞いて驚きました。テレビの『忍者部隊月光』の舞台は現代で,伊賀流・甲賀流忍者の末裔によって編成された忍者部隊が,「あけぼの機関」のもと,世界の平和のために戦うという設定です。しかし,原作の『少年忍者部隊月光』の時代は太平洋戦争中であり,少年忍者部隊は山本五十六連合艦隊司令長官直属の秘密部隊だったというではありませんか。
以後,原作を読む機会がないままに,私はずっと気になっていたことがありました。
「このマンガの結末はどうなるのか?」
ということです。太平洋戦争を日本側で戦っているという設定である以上,戦いに勝ってハッピーエンドとなりようがないからです。
数年前に『少年忍者部隊月光』復刻版全4巻のうち,1巻と4巻を比較的安価に入手することができて,ようやく謎が解けました。これからご覧になるかもいらっしゃるかもしれないので詳細は明かしませんが,最初は威勢よく珊瑚海海戦に参戦して空母レキシントン撃沈に貢献などしていた少年忍者部隊は,やがて,たたかってもたたかっても,戦争を終わらせることも,犠牲をなくすこともできない現実に直面していくのです。空想とはいえ,山本五十六連合艦隊司令長官との会話には重いものがあります(画像2)。敵のウラン研究所を爆破しても問題は解決しないことを知り(画像3),敵の新兵器の威力を理解せず,若い命を戦場に平然と投入する軍の司令たちに絶望する(画像4)。そしてついに巨大なキノコ雲が……(この絵は,ぜひ実物でご覧ください)。
私の偏った読みでない証拠として,画像も少しだけ貼りました(論評のために許される範囲の引用と判断します)。ここで私は特定の思想を主張したいのではなく,活劇の中に戦争の過酷さを描き,少年忍者部隊の苦闘を描き切った吉田竜夫先生に心より敬意を表したいのです。