「上場企業最終利益、計33兆円で4年ぶり最高更新の見通し…円安など追い風」『読売新聞』2022年5月13日を受けて。
円安は誰にとっても不利益というものではない。こうして輸出企業や,海外事業比率の高い企業は大儲けである。「日本にとって円安が不利だ。円安を放置する日銀が悪い」と言うのは問題の立て方がおかしい。円安であれ円高であれ,パワーのあるものはこれを自分の利益に結びつけられるのであり,それ以外のものは割を食う。力を合わせるか,メディアを活用するか,民主制を利用して政治を動かすしかない。
まず大事なことは,21世紀に入って以来,日本企業はちゃんと利益を出しているということである。生産性が低かったり,かつて競争力のあった産業が失ったりということはいろいろあるが,けれど全体としては,リーマンショック後の一時期を除いて,利益は出ているのである(※)。企業利益に過度に忖度する議論は,政治家であれ企業内労組であれ学者であれメディアであれ,まったく的外れである。
労働組合は,普通に,自分自身の生活防衛のために賃上げを要求してよい。それで内需は拡大し,日本全体のためにもなる。やるべきこともせずに立憲は共産と手を切れなどと言うことに血道を上げるのは任務放棄である。政府は,円安で輸入品価格高騰を受けて,仕入れコストを価格転嫁できずに苦しんでいる中小零細企業や,物価上昇の直撃を受ける中低所得の家計を支援すべきだ。それは,日銀でなく政府の仕事である。やらないならば,有権者は次の選挙の選択を考えた方がいい。メディアはこうした問題の構造を直視すべきであり,日銀が悪い,円安が悪いと問題をそらす記事を垂れ流すべきでない。
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