池袋暴走事件の報道だが,「逮捕でなく書類送検」という言い方はおそろしくミスリーディングだ。FNNは大丈夫か。
世の中には,「書類送検」というと,「書類が送られて終わりで処罰されない」という誤解が蔓延している。それと対になって,「逮捕が処罰である」かのような誤解も蔓延している。この報道は誤解を助長する。
・警察が取り調べ→捜査終了→送検→検察が起訴するかどうか判断→起訴されたら刑事裁判
という流れは,逮捕されようがされまいが同じである。ただ,逮捕されて取り調べられていれば検察に身柄が送られ,逮捕されていないならば書類が送られる(法律用語ではないが,俗に書類送検という)。
「逮捕でなく」と言うとすれば「逮捕でなく任意で取り調べ」だ。逮捕は処罰ではないし,逮捕されても取り調べられているだけであり犯罪者と決まったわけではない。逆に言えば,逮捕されようがされまいが,警察の取り調べで犯罪の疑いありとされたなら送検される。書類送検されたというのは罪に問われないどころか,犯罪の疑いありとと警察が判断して捜査を終了したということだ。今回の場合,これから検察が,飯塚容疑者を起訴して刑事裁判にかけるどうか決めるのだ。
今回は遺族の方が「書類送検だけでなく、逮捕されて、本当に罪を償っていただきたい」という表現を使ったのだが,これは音声として流せばよいのであって,報道機関がそのまま見出しやテロップにするのは大いに問題だろう。
「池袋暴走の飯塚幸三容疑者 なぜ 逮捕ではなく書類送検」FNN PRIME,2019年11月12日。
ニュース映像。テロップで,遺族インタビューの映像より前に「なぜ逮捕でなく書類送検」としている。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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2019年11月13日水曜日
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