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2023年6月19日月曜日

「不足経済」と「余剰経済」を同一平面上で扱う観点:コルナイ・ヤーノシュ『資本主義の本質について イノベーションと余剰経済』を読んで

 コルナイ・ヤーノシュ(溝端佐登史ほか訳)『資本主義の本質について イノベーションと余剰経済』講談社学術文庫,2023年。2016年に単行本が出ていたのに気づかず,今になって読んだが,重大な収穫があった。

 今回注目したのは第2部である。コルナイは,社会主義計画経済を「不足」の経済と把握する理論で世界的に著名となったが,本書ではこれを拡張し,社会主義を不足経済,資本主義を余剰経済として,同一の論理平面上で把握しようと試みているのである。私はずっと,そうすべきではないかと漠然と思っていて,いちどだけ経済学入門の講義(2002年度)で「不足の政治経済学」と「過剰の政治経済学」を対比しながら話したこともある。しかし,それ以上,どのように理論化したらよいか見当もつかずに放置していた。そのため,今回は大いに勉強となった。いま,過去の自分の講義レジュメを見ると,教科書はA.アダムス&J.ブロック『アダム・スミス,モスクワへ行く』で,さらにコルナイの『「不足」の政治経済学』とガルブレイスの『ゆたかな社会 第4版』を使って財の不足・過剰を論じようとしたのだが,労働力の不足・過剰が抜けていて,付け焼刃を露呈している。本書でコルナイが効率賃金と産業予備軍に触れているのを見た瞬間,「しまった」と思った。


講談社BOOK倶楽部の本書ページ

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000373948




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