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2020年8月21日金曜日

教育基本法第9条2項の規定を教員の解雇を制限する根拠とした奈良地裁判決

 田中圭太郎「奈良学園大学、学部再編失敗し教員大量解雇…無効判決で1億円超支払い命令、復職を拒否」Business Journal,2020年8月16日。

 ・この報道の通りだとすれば,教育基本法第9条2項の規定を教員の解雇を制限する根拠とした点で重要な判決と思う。

・ただ,専任教員と再雇用教員で判決が異なった理由はよく検討する必要があると思う。職責の区分ならばあり得るが,正規・非正規の身分差によるのであれば問題が残る。

・私学の理事会であれ国公立の理事会であれ,「ガバナンス改革」と称して裁量的経営を推進するのは経営学のイロハを知らない所業である。確かに経営者には一定の権限が必要だ。しかし,経営者は組織の主権者ではない。だから営利企業でも,株主主権なのか利害関係者統治なのかが問題になる。大学においても,経営者の経営裁量を誰がどうチェックすべきか問われねばならない。教員という専門家集団によるチェックは,依然として必要である。

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教育基本法

第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。


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