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2018年12月9日日曜日

日本の書籍流通改革の核心は返品条件付き売買の見直し

 星野渉「日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由」東洋経済ONLINE,2018年12月9日,は,日本の書籍流通がその根本からの見直しを迫られていることを示唆している。
 以前に私は,日本の書籍流通の特徴の一つは再販売価格維持行為であり,もう一つは返品条件付き売買(委託販売制とよく呼ばれるが正確ではない)であるとした上で,その変革の主戦場は再販ではなく返品条件付き売買だろうと述べたことがある()。この判断は妥当だったと思う。この記事は,今まさに,再販制ではなく,返品条件付き売買を見直さないと業界が再生しないことを示しているのだ。返品可能であることと引き換えに書店が強いられてきた粗利益率の低さを改善しないと,書店経営は成り立たないからだ。
 
 (引用)「返品率を大幅に引き下げることができれば,日本でも人々を引き付ける魅力を備えた書店なら,まだまだ開店・営業していくことが可能になる」。

 返品率を下げる方策は二通り考えられる。ひとつは,現行制度を維持しながら,返品率を画期的に下げる取り組みをすることだ。そのためには,取り次ぎが書籍を選んで書店に送りつけるパターン配本をやめねばならない。そして,取り次ぎと書店の双方が危機感を持って,客のニーズを読み,ポリシーを持った配本を行うことが必要だ。当然,大手取次と全国の書店が連携した組織的な取り組みが必要だ。そのためには,出版流通事業が赤字に転落した大手取次が,腹をくくって改革に取り組まねばならない。寡占企業であるが故に,その責任はひときわ重い。他方で,書店は取り次ぎへの依存をやめ,死活問題として品ぞろえに取り組まねばならない。
 もうひとつは,よりラディカルな解決策だ。つまり,買い切り制に移行することだ。この場合,よほど大規模か個性的な書店のみが健全経営を達成し,かなりの書店はリスクがとれずに消えていくことになるだろう。
 どちらを実行しても容易ではない道のりになる。しかし,どちらも実行できないのであれば,書店の減少が加速する現状が続くだけだろう。

星野渉「日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由 決定的に「粗利」が低いのには原因がある」東洋経済ONLINE,2018年12月9日。

※出版物の再販売価格維持行為に関するノート(中小出版社とアマゾンとの間での紛争に寄せて) (2014/5/10),Ka-Bataアーカイブ。

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