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2018年12月23日日曜日

追悼・石橋雅史氏。「将軍を狙う覆面鬼」のヘッダー指揮官

俳優の石橋雅史氏が逝去された。私は彼の良い観客とは言えないが,『バトルフィーバーJ』のヘッダー指揮官がすばらしい悪役だったことは知っている。とくに印象的だったのは第50話「将軍を狙う覆面鬼」。
 『バトルフィーバーJ』は「5人のチーム」+「メカ・巨大ロボット」というスーパー戦隊のフォーマットを確立した1979年放映開始の番組だ。その特徴は,上と下の世代,アナクロ権威主義とモラトリアム主義の混合。彼らの所属は国防省であり(防衛省でも防衛庁でもない,れっきとした国防省が日本にある!),上司は倉間鉄山将軍で,戦前派風の剣の達人(演じるのも東映時代劇の雄,東千代之介)。ところがバトルフィーバー隊の若者はバトルジャパン,バトルフランス,バトルコサック,バトルケニア,ミスアメリカと名付けられたインターナショナルで(実際に外国人なのは初代アメリカだけだが),かつ軽めの若者である。遊びすぎたり調子に乗って敵エゴスをなめてかかったりして,鉄山将軍に「馬鹿者!」と怒られる。それが妙にかみ合っている。そして,エゴスは悪の結社というよりカルト宗教。首領サタンエゴスは神で,石橋氏演じるヘッダーは戦闘指揮官であると同時に祭祀であり,怪人を「皇子」「神の子」と敬う。このノリを,バブルはおろか1980年代も来る前に出したのは,なかなか先駆的だったと思う。
 そのような中,このエピソードはあからさまに時代劇である。脚本は上原正三。エゴスの指揮官ヘッダーは,邪心流の武道の開祖,鬼一角の門下生であった。そして,鬼一角は,鉄山の師,藤波白雲斎に30年前破門されていたのだ。邪心流の極意は「卑怯も兵法なり」。ヘッダーはその言葉に忠実に鬼一角を殺し,白雲斎をも暗殺して,鉄山将軍を誘い出す。バトルフィーバー隊の若者を「雑魚」と言い切り,鉄山を倒すことのみに執念を燃やす2代目鬼一角ヘッダーと,鉄山との決闘の時が来た!
 一切の迷いなく「卑怯も兵法なり」と信じ,憎しみのみに身を委ねるヘッダー。石橋雅史氏の鬼気迫る演技は,39年たっても印象的である。

『バトルフィーバーJ』Amazon Prime Video.
https://www.amazon.co.jp/dp/B01LYI86Z5/

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