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2020年3月16日月曜日

株価が下がれば含み損が出るのは当たり前。当たり前でないのは日銀がETFを買い続けて来たこと

 日銀はあまりにも多くのETF(指数連動型上場投資信託受益権)を購入している。3月10日現在の保有額は29兆969億7140万1千円である。ちなみに,2月29日よりも2000億円以上増えている(日銀バランスシート)。そのため,新型コロナウイルス危機に際してジレンマに直面している。一方では株式市場安定のためにさらに買い支える行為に乗り出しており,それが上記の保有額増につながっている。他方でその程度のことでは株価下落は抑えられず,保有するETFにはすでに含み損が発生していると考えられる。黒田総裁は日経平均株価で1万9500円程度が損益分岐点と国会で述べたが,先週末3月13日の終値は1万7431円だったから。買い増すのが日銀のポリシーだが,それは日銀に損失を発生させる危険をさらに増す。

 そもそも,日銀はなぜETFを購入するのか。経済危機に際して信用崩壊を防ぐために一時的に買い入れたのではない。2010年以来,延々と買い続けてきたのだ。
 これは金融緩和ではない。日銀は「リスク・プレミアムを低下させるため」と説明しているが,端的に株価を下落しにくくするためだ。銀行として融資を行うことや債券を購入すること,すなわち信用を供与することと,エクイティ投資とは全く性質が異なる。投資信託を通した間接的投資とはいえ,エクイティ投資とは,日銀自身が資本家になってリスクを取り,企業に投資することに他ならない。
 株式投資を恒常的に行っているのだから,日銀には景気がよければ利益が上がり,経済危機に際して損失が出るのは当然の帰結である。貸した金は返してくれということができるが,エクイティ投資は自らリスクをとったのだから投資した資本が利益を生まなければ自分が損をするのだ。それは何もおかしくない。

 おかしいのは,中央銀行が自ら株式投資家にならなければ投資を支えられないという日本経済における投資の停滞性であり,それに対して民間経済の再編成を促さずに,中央銀行の恒常的株式買い支えに寄生させてどうにかしようという政策方針だ。もともとがおかしかったのだ。

「保有ETFの含み損には引当金必要、十分注視する=黒田日銀総裁」Reuters,2020年3月10日。



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